

Haruki Konno
今野 晴貴
POSSE代表
仙台市出身 大学生
1983年生まれ
POSSEは今年6月都内の大学生を中心として結成された、若者の「働くこと」に取り組む団体。「フリーター」や「ニート」などと呼称されている同世代の実体を、自ら調査し、法律や経済、社会学など様々な角度から社会に意見を投げかけている。
今野 晴貴 さん(POSSE代表)
働く若者の実態を発信しようと学生やフリーターを中心に結成されたPOSSE。
最近、若者は「就労意識が低い」「ちゃんと働かないし学ばない」など厄介物扱いされて語られがちだ。
「劣悪な環境で働く意志を奪われる実態がある」とPOSSE代表、今野晴貴さんは言う。
いったい若者の働く現場に何が起きているのか。
「まともな職業にもつかず、だらだらと無責任に生きている」と、若者は言われがちです。確かにフリーターをしている友人を見ていると、活気のない人が少なくありません。ですが、こうした表現には厳しい労働実態や、将来の展望のなさが見過ごされているのではないでしょうか。「まじめに働かず、だらだらとしている」のは、若者の「心理」が変わったからだと一面的な分析がなされます。でも本当にそうでしょうか。「心理」そのものが主たる原因ではなく、労働のあり方や産業構造の変化による影響が大きいと思います。
また、ニートという「失業者」は一定数いますが、日本ではなぜかニートは、「やる気のない若者」だとか「ひきこもっている人」と根拠なくレッテル貼りされます。働かない若者は昔からいたと思いますが、ひきこもりだとは言われていないでしょう。「働かない・勉強しない」若者は、マスコミで騒がれているほど増大しているのだろうか?若者に対するイメージが、相当に歪められた形で流布されているのではないか?こうした違和感が活動のきっかけでした。

友人の中には就職に失敗して、派遣労働をしている人もいます。こうした人たちの話を聞く限り、企業の「働かせ方」はひどいものです。賃金も安く、将来もないという話ばかりです。
そもそも派遣というのは、最近になるまで法律で禁止されていた労働形態です。最初は1985年に専門職に限って許されました。その後、99年に労働可能な分野が大々的に広がり、ほぼ全面的に解禁されるようになったのです。
なぜ禁止されていたのか。それは、雇用が不安定になる上に、中間業者がマージンを得ることで、賃金が下がってしまうという現象を起こしやすいからです。しかし、そういう問題をなんら解決しないまま、財界の強い要望により、派遣の参入できる分野が拡大してしまいました。
派遣法の改正は、正社員が減っている大きな原因のひとつです。こうした「非正規労働を増やしてほしい」との財界から政府への申し入れが達成されたのが、小泉改革でした。小泉改革の結果、ものすごい数の非正規労働者が、若者を中心に増加しています。
そうですね。ニートと呼ばれる人の中には、ニートになる前に、派遣などで使い捨てのように過酷な労働を強いられたケースが多いです。
実際に聞いた話で言えば、30代のある男性は、働いたからといって技術が身に付くわけでもなく、いつでもクビになるような環境で働いていました。そうなると働くこと自体がいやになりますよね。彼の場合は、ひとり暮らしだから、それでも働かざるをえませんでした。けれど、これが自宅であれば、働く意欲がなくなるのではないかと思います。
また、学生の友人が若者の憧れる広告系の企業にバイトしていたとき、ものすごく楽な仕事で、その企業にいいイメージを持ったといいます。でも、同じ職場では、派遣の人が7桁の数字を一日1万件打ち込んでいたそうです。見るからに過酷で、かつスキルも全く身につかない働かせ方です。その人は、「自分は能力がないから諦めている」と言ったそうです。
やる気があったとしても、それを発揮できない労働環境が増えている。それこそが問題だと思います。

財界や政府は「自由な働き方が増えるのは、選択肢が増えていいではないか」という言い方をします。非正社員が増えることによって、人それぞれ、多様なライフスタイルに合った職場環境が選べるというわけです。その点に関して、表面的に問題はありません。しかし、現実には「自由な働き方」の下では生活していけません。正社員でないと、生活保障がないからです。法律上、本当はフリーターも保険に入れますが、適用させない企業は多いです。それにも関わらず、行政は取り締まりませんし、個人的に企業にそういうことを要求したら、契約更新してくれない可能性は高い。そうした現状に諦めて、意欲を失う人も多いのです。仕事の内容が劣悪なものだというだけでなく、生活保障の面でもやる気がでるような状況ではないのです。
(注1)
「NotinEmployment,EducationorTraining」という英語の頭文字をとってニート(NEET)と呼称。本来はイギリスで失業者を含む、教育も職業訓練も受けていない若者を指した。日本では、ひきこもりや犯罪親和層と重ね、実態とずれてとらえられる傾向がある。一説には63万人いるとされている。
「働きも学びもしない困った若者が増えている」といったマスコミの喧伝によってそうなったという話もあります。その経緯は不明なところが多いのです。個人的には、少なくとも「困った若者が増えている」という言い方をすることで、得をしている人がいることを指摘したいと思います。例えば、ニートやフリーターが増えたことで、若者が凶悪化していると盛んに言われていますが、その影で法律を守らない企業は問題になりません。このように若者を槍玉にあげておくことで、問題の焦点をずらすことができるというわけです。
私の地元の友人の多くは、就職できておらず、将来の展望を抱いていません。私は、そういう同世代の現実を見ると同時に、大学で労働法を学ぶなかで、労働環境がどのように変化してきたのかを勉強してきました。パートタイム雇用が増え、派遣が解禁されるという流れがありましたが、いろいろと調べていくと、95年に日経連の発表した「新時代の日本的経営」がひとつの山場であることがわかりました。ここで彼らは、右肩上がりの経済成長が期待できない環境で、雇用形態の変更、能力主義・業績主義の導入、終身雇用制と年功序列型賃金制の縮小・解体、雇用、賃金、一時金、退職金など人的コスト削減の徹底化を提言しています。財界と政府が一致して、企業にとってコストのかかる「安定した雇用」を見直すための提言を進め、法律を改正する。そんな流れが見えてきました。
若者の「心理」ばかりが問題にされている中で、こうした雇用環境の変化がほとんど取り上げられていないことは、はっきりいって異様な状況といわざるを得ません。
あります。昔だとどこかの会社に入って懸命に働けば、必ずではありませんが、雇用は保障されていましたし、社内で上昇する可能性をもっていました。ところが、今は企業の中で上昇する回路は、本当にごく一部にしか開かれていませんし、厳しい労働の中で脱落する人も多いのです。同世代の友人を見る中で、分断を実感しています。

手応えはあります。こうした構造を知ることで自分の置かれた状況を知り、そのことで同世代が共感を覚えていると感じています。
もともと、政策の変化の影響を最も受けている世代自身が、政策や法律についてよくわかっていません。最近、企業の収益はV字回復をしています。多くの識者は、その背景として派遣労働の大量導入を指摘していますが、そういうことについて、若者はほとんど知りません。
そうした結果、株価至上主義の経済がはびこって、お金をもうけられる人はどんどんもうかるけれど、一方で劣悪な条件のまま働くしかない人がいる。そういう構図が出来上がっているのが、今の社会です。
そんな中で、若者は「おかしくなった」と言われるわけですが、その若者の意見を聞こうという機会自体がありません。一方的に「働いていないからニートだ」「やる気がないからフリーターだ」と言われてしまって、若者たちが「自分たちはこうしたい。こうあるべきだ」と表現する場が存在しないのです。私はPOSSEを、こうした若者の実態や意見を発信し、あるべき社会を考える場所にしていきたいと思っています。
特に、今後は法の適正化をはかるよう訴えたいと思っています。また、社会的な政策への提言を財界、行政、政党に訴えたいと思っています。誰かに決められるのではなく、自分たち自身でコミットしていきたいです。

まずは友だちをつくること。それが大きいです。独りになっては駄目です。自分たちの境遇を語り合う仲間が必要です。友だちがいれば、互いを「勝ち」か「負け」かの物差しではなく、自分たちの世代を覆う問題として認識することができます。
そしてとにかく、「自分だけ勝ち組になろうとするな」と訴えたいです。自分の生きる糧を得るために働くわけですが、実際には自分だけではなく、社会の中で働いているわけです。自分だけ抜け駆けする考え方だけだと世の中は荒んでしまいます。
いろんな生き方があっていいけれど、一緒に生きている人、友だちへの思いやりを忘れないでほしい。隣にいる人が蹴落とす対象でしかないのは、恐い社会だと思います。

Haruki Konno
今野 晴貴
POSSE代表
仙台市出身 大学生
1983年生まれ
POSSEは今年6月都内の大学生を中心として結成された、若者の「働くこと」に取り組む団体。「フリーター」や「ニート」などと呼称されている同世代の実体を、自ら調査し、法律や経済、社会学など様々な角度から社会に意見を投げかけている。NPO法人格を申請中。現在会員は100人以上おり、下北沢に事務所を構えている。詳細は
http://www.npoposse.jp/index.html