

Ryugo Takaramoto
宝本 龍吾
1983年京都市生まれ 慶應義塾大学環境情報学部2年 一浪を経て大学入学直後に「学生シンクタンクWAAV」と出会い、『学生のためのビジネスコンテストKING』の活動に没頭。2004年度の実行委員長として、今年8月末に行われた「KING2004」を開催。
宝本 龍吾 さん(KING2004実行委員長)
起業という言葉を目にする機会が多い。やりたいことを適えたいという夢を託す人、成功したいという野望を見て取る人もいるだろう。でも、実際のビジネスの経験がない中で夢ばかり膨らませても仕方ない。宝本龍吾さんは慶應大学の学生で、学生ビジネスコンテスト「KING」の代表を務める。学生がビジネスプランという課題を解く中で社会と接点を持ち、実社会に羽ばたく力をつけるというものだ。「ビジネス版甲子園」という「KING」とは、いったいどういうものなのだろうか。
KINGは学生が運営し、学生を対象にしたビジネスコンテストです。経済産業省や東京都などからの後援、企業数十社からの協賛・協力のもとに開催されています。KINGというのは、略称ではなくビジネス界のKINGを目指したいという思いでつけられました。
創立は1996年で、「大学生のためのビジネス版甲子園を作ろう」という考えから始まりました。大学生が現実の社会に入っていく経験と言えば、就職活動が大きいです。
でも、企業にエントリーシートを提出し、面接を受けるだけです。それで実際のその学生の能力がわかるのか。むしろ無視しているのではないか。大学生のビジネススキルを正当に評価して欲しい。そういう想いが創設した人たちの根底にありました。
とはいえ、学生と社会の関わり方の一つとして、「ビジネスコンテスト」という方法を選んでいるだけで、コンテスト開催が目的ではありません。プロ野球選手になりたい人は甲子園が登竜門。それと同じくビジネス界への登竜門としてこのコンテストを位置づけています。

6泊7日の合宿形式で行います。将来起業を目指している人、ベンチャー団体に所属している人、企業でのインターンシップを数々経験している人など、ビジネスに関心がある様々な人が参加します。6人1チームで実際にビジネスプランを作り、競いあいますが、全く初対面同士でチームを編成します。実際の職場でも顔なじみばかりで仕事をすることは少ないでしょうから、リアリティのある環境だと思います。そして、それぞれのチームで作ったプランを第一線で活躍されている社会人の方に審査してもらいます。社会と現実的な接点の少ない学生にとっては、得がたい経験になると思います。
いま一般的に行われているインターンは、半ば惰性化しているという実感を持っています。もちろんプロジェクトの一員として成果が出るまで参加させてくれる企業もあります。しかし、ただルーティンワークをやらせる企業が少なくないのも確かです。また学生にも就職対策としてとりあえず利用するという考えが目立ちます。
KINGの理念としては社会との接点を提供するだけでなく、学生が自分で目標を設定し、それに向かって主体的に動けるようにする。そういうことを重視しています。そこがインターンとは異なりますね。
もともとビジネスに興味を持っていて、大学に入ったら勉強したいと思っていました。というのも、中学3年から高校1年まで地元の京都でサークルの代表を務めていて、クリスマスパーティなどのイベントを開催していた経験があるのです。今ではスーパーフリーのイメージがついてしまったイベントサークルですが、そういうものではなく、高校生と大学生が同じ空間で楽しむためのサークルを運営していました。多いときには500人くらいの規模のパーティを開催していました。
はい。ほとんど勉強はしませんでしたね。僕が通っていた学校は中高一貫で、灘中とか一流どころを落ちた、いわば負けを経験した学生が集まる学校でした(笑)。そのせいかおもしろい奴がたくさんいて、おまけに自由な校風だったのでやりたいことをやってましたね。とにかく毎日面白いことをやろうとして、授業中に馬の被りものをして廊下を走る奴がいたりとか…。高校が楽しくて仕方がなかったですね。先生からすれば手の焼ける生徒ばっかりじゃなかったでしょうか。

代表を務めるという経験の中でマネジメントという仕事に面白さを覚えました。同時に難しさも味わいました。特にお金がからむと人は豹変するということを知りましたね。
とにかく、自分が興味を持てる範囲ですが、経済やビジネスが楽しいと感じ始めました。あとは中学くらいから『AERA』を愛読していて、経済とかビジネスという分野に関心を持ち始めたのが大きいですね。あくまで漠然と「面白そうだな」くらいでしたが、大学に入ったらビジネス系のサークルに入りたいと思っていました。そうしたら偶然KINGを見つけ、そこで先輩の話を聞いていたらどんどん惹かれてしまった。
それまで出会った大学生は、どちらかと言えば「何をしていいかわからない」人たちでした。だから「大学生はやりたいことが見つからなくて困っているんだなぁ」というイメージを持っていました。
けれどKINGの先輩たちは違って、まず目が輝いていました。自分たちの活動や理念に自信を持っていましたし、サークルの運営についても学生だから手を抜いても許されるという意識を持っていませんでした。というのも、コンテストは全国から120人の学生を集め、泊まり込みで行いますし、また企業の方々からもお金の協賛をいただいています。いろんな人の支援があって成立しているわけですから、プロ意識がないととうてい運営できません。そういう熱意を感じるにつけ、ここにいたらやりたいことが見つかるかもしれないと思い、参加を決めました。
1年目に私がやったのは、「ケース」と言って、コンテストで解く課題を決めたり、それに関する情報を集めたりする仕事でした。KINGのスタッフは1、2年生が中心ですが、参加者は3、4年生が多いので、コンテスト内容を相手に納得してもらうためには、やはりスタッフも様々な勉強や情報収集をしなければなりません。
ちなみにKINGのスタッフは、2年になれば引退します。これは2年で学んだことを残りの学生生活に活かすという方針からです。だから1年でも、やりたいことがあれば任せます。
ノウハウを覚えるのも大事ですが、活動にあたっての気持ちを伝えて行くことはもっと重要です。だから仕事を覚えてから運営に参加するのではなく、やりながら覚えて行くというスタイルです。

やはり高校、大学と社会にはギャップがあって、それをどう埋めるかのひとつのアプローチとしてビジネスを考えていることに変わりはありません。
コンテストを必ず開催しなくてはならないといった義務はありません。パネルディスカッションを行うのもいい。テレビ局に頼み込んで番組枠をくださいとお願いするのでもいい。まず自分たちは社会をどうしたいか。何を発信するかを話し合い、そこでビジネスコンテストが最適だろうという結論に至り、今年の夏も開催することに決めました。
ビジネスプランをつくることを通じて、自分の興味関心が明らかになるので、そうした気づきの場になればと思います。企画立案が好きなのか、アイデアを出すのが楽しいのか、リサーチが好きなのか。
コンテストには最前線で活躍している社会人にも参加してもらい、作成したプランを見てもらいます。そこで自分たちのやっていることは社会に通用するのかもわかります。それらすべてが次のステップになればいい。
学生が受け身になると社会が硬直化すると思います。学生がやりたいことを明確にし、一歩社会に踏み出す。コンテストは終りではなく始まりの場だと思っています。

これまで、ベンチャー企業の社長やコンサルタント、監査法人の方など、いろいろな人と話すことで「なるほど、こういう考え方で企業は動いているんだ」という発見がありました。例えば、ビジネスで動くお金の規模は学生が想像している以上です。ビジネスプランを作っても、いくら利益をあげれば会社がスムーズに動くのか。そういうことも知りませんでした。そういう大きな話だけでなく、自分の父親はいくら稼いでいるのかすら知らなかったわけで、世の中を動かしているいろんな仕組みについて改めて興味を持ちました。でもそれ以上に、一緒に一つの目標を目指してやってきた仲間が一番大きいですね。
父親はラッピングに使われるリボンを扱う会社を経営しているんですが、この会社を買収したいですね。そういうことを言うと、生意気だと怒られそうですが。
リボンはラッピングの添え物扱いですが、全然違う切り口で何か出来るのではないかと思ってます。やはり人が楽しい姿、笑顔がこぼれる仕事がしたいです。リボンでそれができるのではないかと思っています。
自分も起業したいという思いはありますが、「なぜ起業したいのか」という根っこの想いが重要だと考えています。「儲るからやりたい」「やりたいことができるから」でもいい。でも、儲ることだけでいいのか。自分のやりたいことは就職したらできないのか。そういう問い掛けが大事ではないかと思っています。会社を起こすのは大変ですし、場合によっては一生借金を抱える羽目に陥りますから、そこはよく考えないといけないと思います。

思春期の頃は、自分が何をやりたいかわからないものです。そのわからなさは、「将来何をしていいかわからない」という不安にあると思います。僕はこう考えています。「いまやりたいことをやらないで、将来やりたいことはできない」と。
いま何がやりたいかを考えること。これは自分との対話になります。自分との対話ができないことには、他人との対話もできません。
先のことを考えて何もできないのなら、まず動いてみる。そうしたら、もうさっきとは違う場所にいるのだから、違う風景が見えるはずです。そのうちやりたいことが変わるのもいい。それは成長だと思います。エイっと選んでみて、失敗したら自分を成長させるためにどっちにしてもこういう結果になったんだと思えばいい。必ず次へのステップになりますから。
Ryugo Takaramoto
宝本 龍吾
1983年京都市生まれ 私立高槻高校卒業 現在、慶應義塾大学環境情報学部2年 中学から学校内で目立つ存在であり、問題児。中学3年の冬から1年半、中・高校生だけのサークルを立ち上げ、大学生と高校生の交流イベントを企画。一浪を経て大学入学直後に「学生シンクタンクWAAV」と出会い、『学生のためのビジネスコンテストKING』の活動に没頭。2004年度の実行委員長として、今年8月末に行われた「KING2004」を開催。
2004年度KINGのオフィシャルサイト:
http://www.waav.org/king/