

Koichiro Tanaka
田中 公一朗
1963年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部で人生を学ぶ。その後ライターや編集者を経て、音楽評論家として2001年8月、『マイルス・デイビス――神話の検証』を出版。賛否両論を巻き起こす。予備校講師としても活躍中。
田中 公一朗 さん(ジャズ評論家・予備校講師)
音楽を言葉で伝える。
「愛情を持っていないと批評すべきではないです」ときっぱり答える田中公一朗さん。
ジャンルにこだわらず、音楽に対する情熱は人の心を動かします。
父親がピアノを弾いていて、音楽好きな家庭だったので、子供の頃から家にはレコードがたくさんありました。いつも音楽がかかっていたんです。ジャズは大学時代から好きで聴いていましたね。

ジャズというより、音楽そのものの魅力ですよ。特にライブの場合はそうですけど、その場限りで「一回きり」だということです。例えば、ジャズというのはアドリブが勝負というところがあって、毎回違うわけですよ。テイクによってそれぞれが価値を持っているんです。その「一回」にかける力(パワー)でしょうね。でもこれはジャンルにこだわらずでしょう。
3000枚くらいです。私は少ないほうですよ(笑)。音楽評論する人は、1万枚から2万枚、普通に持っています。

いやいや全然、もうテクノからポップス、オペラ、クラシックまで、ジャミロクワイから何でもですよ(笑)。
そうですけど、今後は広げていきたいですね。もっと音楽全般に。今はジャンル分けしても意味がないんです。「ジャズ」というジャンル自体、なくなってきているんです。特にプレーヤーや聴き手は全く意識していないですね。いい曲をやりたい、いい曲を聴きたい、っていう。一番遅れているのはメディアと売る側だと思いますね。
例えば、「テクノ」ってあるじゃないですか。今、テクノのある一部分というのはジャズにすごく寄っているんですよ。アドリブも普通にはいってくるし、逆にジャズの人もテクノに興味を持ってきている。DJの人達がマイルス・デイビスの音源をサンプリングしたりしています。もうジャンル分けそのものに意味がないんです。
基本的に別のものだと思います。言葉というのは具体的なイメージが必ずあるじゃないですか。でも音楽というのは具体的なイメージが浮かばないでしょ。極めて抽象的なものですよね。例えば、歌詞がない音楽の場合に、それがどういう意味合いを持っているのかは人によって全部違うじゃないですか。音楽は言葉の違い以上に幅広いものだと思うんです。それに対して言葉をあてはめようというか、表現しようとしているわけですから、とても難しい作業だと思います。

難しいですね。安易に流されないというか、自分に正直になることが大事でしょうね。何となく「これ変だな」と思いながらでも、みんながしているから、「まあいいか」ということがあったりしますよね。そこで抵抗することが大切なような気がします。自分のポリシーみたいなものが生まれそうなところで崩れていってしまう。つまり孤立を恐れているんですよ。むしろ、そこで孤立していってほしいです。もちろん、「引きこもれ」という意味ではないです。孤立して、なおかつついてくる人達が本当の友達ですし、単に一緒にベタベタしていて、何となくわかっている世界の中で、ある程度自分をごまかしながらというのは私は違うと思うんです。

そうですね。孤立するには自信がないと出来ないことですから。でも、そこで悩むプロセスは必要だと思うんです。結局は「勝手に自分で考えて」って言いたいんですけど。何かそこにルートがあって、こういうやりかたでいけば、自分の道が見出せるだろうということはないと思うんです。みんなそれぞれ別なんですから。だから「そういう質問しないでって」って言いたい(笑)。そういう質問に答えること自体が不可能なんです。こっちも自由にやっていますから(笑)。

まず言語表現ですから、言葉は十分に鍛えておく必要があると思います。簡単に言うと、使える語彙を豊富にしておくことです。それと批評の基本的な方法というのは文学の世界でつくられたので、出来ればフランスの思想系のものを読んでおくといいですね。大学に入ってからでいいですけども。じゃないと、単に好き嫌いの印象批評になってしまったり、あるいはデータばかり書いてしまったりします。一番大切なことは、音楽で表現していることを適格な言葉にしてあげることですから。むしろ、そこから何が読み取れるかが大切なんです。あとは、やる気さえあれば必ずチャンスは来るはずです。
Koichiro Tanaka
田中 公一朗
1963年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部で人生を学ぶ。その後ライターや編集者を経て、音楽評論家として2001年8月、『マイルス・デイビス―神話の検証』を出版。賛否両論を巻き起こす。予備校講師としても活躍中。
【田中 公一朗さんの本】

『マイルス・デイビス―神話の検証 』(河出文庫)