

Hakuryu
白竜
1952年佐賀県生まれ。84年、崔洋一監督作品「いつか誰かが殺される」でスクリーンデビュー。89年、北野武監督作品「その男凶暴につき」で冷徹な殺し屋の役を演じ一気に注目を浴び、その後は俳優活動が中心となるが、最近は音楽活動も本格的に行う。
白竜 さん(俳優・ミュージシャン)
アーティスト名の「白竜」とは?白は朝鮮民族の美の象徴といわれている。歴史の中で虐げられた哀切の色。だが、その白は、精一杯の抵抗を示してきた強さを秘めた深い色でもあるという。その「白」に、辰年生れのご自身を重ね合わせたすばらしい名前だ。寡黙なスクリーンのイメージとは違い、たくさん語ってくださった白竜さんでした。
いや、役者もね、やろうとは全然思ってなかったんです。ただね、考えてみたら中学の1年から担任の先生が演劇部の顧問だったんですよ。それで1、2年の時、演劇部に引っ張られてたことあるんです。あとで考えてみたら、あんなことやってたんだなあって。全然やる気なかったんですよ。俺、剣道部だったので学校朝早く行ってたから、やれっていわれて、それで2年間やりました。全然俺の中には意識はなかったんですけどね。ぼんやりとはそう思ってたのかもしれないですね。
バンドをやって、剣道をやって、バイクに乗って、だから本当、まあ昔の硬派って感じですかね。周りからは不良って思われてましたけど。バイク乗って、ギター弾いてりゃ不良でしたからね、昔は。でも親父には、「手に職を持て!そうすれば食っていける」って、そのことだけよく言われていて。それで、手に職つけられるようね、有田工業高校ってとこがあるんですけど、その頃そこが一番水準が高かったんでそこに行きました。まあ、俺、全然勉強はしなかったんですけど、剣道はやってて、佐賀県では結構認められてたんですよ。それで、バンド活動と剣道と、あとバイク好きだったんでね、その3つですね。他に時間がなかったんです。ナンパする時間とかなかったです(笑)。

いや、俺の頃はね、今みたいに異性と気軽に出会ったって、普通にどっか行ってっていう時代じゃないですからね。もう何か異性と交わる機会すらかっこ悪いみたいな時代でしたから。不純異性交遊っていうより、不純異性不交遊!?でもホントはどっかで異性と交わりたくて、ごくたまに女の子と映画なんぞに行った日には大変!汗だくだくですからね(笑)。時代ですよね。
とにかくすごい衝撃だったですよ、ビートルズとかね、ローリングストーンズとかが。あとアメリカンシネマ、だから「卒業」や「いちご白書」や「ウッドストック」とかね、あのへん、なんか全部感化されてますよね。時代としても70年代ってすごく強烈な時代だったし。俺、伊万里っていう町に住んでてね、その頃佐世保エンタープライズの訴訟あったでしょ。ヘルメットかぶった連中が全国から伊万里に集まってきてね、何か物々しくて、お祭り騒ぎみたいでね。そこで俺はボブ・ディランの「風に吹かれて」っていう反戦歌、歌ってましたね。
誰っていわれると困るんだけどね。俺はけっこう、「この曲のこのフレーズが好き」っていうタイプだから。だから幅広いよね。ボブ・ディラン、ベンチャーズ、ジャニス・ジョップリン、ビートルズだとか、昔ビルボードっていうのかな、ベスト10に入っている曲をよくコピーしたよね。まあ今の子もそうだと思うけどね。

もうその頃は音楽がすごくやりたくなっていて、高校卒業したら逃げるように東京来たんですよ。ホント「真夜中のカウボーイ」という映画の感じ。ジョン・ボイト、あれですよ。一旗あげてやろうって感じの。でもそんなうまくはいかなかったです。実は俺ね、就職しながら、タレントの養成所みたいなところ1回行ってた時があって、営利目的なのがわかったからすぐやめちゃったんだけど。会社の方も変な会社でね、やめちゃったんですよね。
そのバンドで1年ぐらい九州からツアーを回ってて、家の仕事もしてたので、物理的にこりゃできないってことになったんですよ。それで音楽1本に絞って、当然ちゃんとしたミュージシャンと組もうということで、また東京に来たわけなんです。

たまたまですよ。崔洋一さんが内田裕也さんを紹介してくれ、内田裕也さんが松田優作さんを紹介してくれるっていう、全部流れがあるんですよ。誰かが誰かを紹介して、そういう流れがあるんだよね。うん、でも感謝してますよ。

最初はぜんぜん俳優とかは思ってなかったんですよ。30歳の頭ぐらいかな、崔さんからいきなり「今度映画撮るから出て」って言われて。デビューして7年目ぐらいですかねえ。
なんでしょうね(笑)。でもミュージシャンって結局舞台の上で、虚像を演じているわけでしょ。それに大体がステージ上は少人数なのでひとりひとりがものすごいパフォーマンスをしなくてはいけないわけですよ。だから監督連中とかよく言いますよね、「ミュージシャンほど存在感のある奴らはいないって」。まあ、逆にミュージシャンを使わない監督もいますけど。
役のイメージがね。武さんの「その男凶暴につき」とか、あのインパクトがすごいじゃないですか。
わかんないです、それは。たまたまはまり役だったんです。俺ってやっぱりアウトローの役多いじゃないですか。昔はね「役者ダメになっても、音楽があるからそれはそれでいいや」って思ってたんですけど、これだけキャリアがあるとね、役者としての責任とかもあってもう逃げられないんですよ。結構自分としても「役者」と「ミュージシャン」を両立してる方がストレスがなくていいし。自分としては、これからはもっといろんな役どころやっていきたいんですよ。例えば、一般のどこにでもある家庭の親父と子供の映画の父親役とかね。徹底的にアウトローの役を突き詰めていきたいっていうのもありますしね、アンソニー・ホプキンスみたいにね。

そうなんですよ。だからこんなこと言いながら、「こういう役ありますよ」って言われたら、面白そうだって思ってパッと乗っちゃいそうですよね(笑)。とりあえず、オファーがある限りは続けていきますよ。
ディナーショーの大きいのがね、できるようになったんです。昔はメッセージソング、バンバンやってたんですけど、20年経ってみてね、みんなの聞ける音楽っていうか純粋に楽しんでくれる音楽を少しずつだけどできるようになってるんですよ。全国を回ると、いろんな人々に出会えるわけじゃないですか、それが楽しいんですよね。

去年はね、ちょこちょこやってたんですけどね。今年はね、俺としては次の「アリランの唄」を作ろうと思ってるんですよね、韓国に行って。ライブはね、そのあと自分が新しい方向に向かった時にやりたいなとは思ってますよ。
わかりました(笑)。

20歳と高一のやつなんだけど、俺こういう仕事してるから、あんまりふれあう機会は少ないんですけどね、でも逆にしゃべんないようにはしてますよ。俺、自分の父が朝起きたら作業着着て、安全靴はいて、どんなに寒い日も暑い日も愚痴一つ言わず家を出ていって、帰ってきたら黙って家で酒を飲んでいる、そんな父親だったから。すごく寡黙で決して華やかではないけれど、男の生きざまみたいなものは、すごく背中から伝わってきて…。俺もけっこうやばいことしたけどね、そろそろ度が過ぎるかなと思うといつも俺の頭には親父の背中が出てきたからね。だから俺もね、子供にあーだこーだ言うもんじゃないなって、自分で考えてやりたいことやれって感じなんだけどね。
いつの時代も高校生っていうのは、精神的にも感情的にもすごい豊かだし、とにかくすごく迷うんだよね。だからひとつ自分のやりたいこと見つけるっていうのかな、そういう作業っていうのはすごく難しくって、でも大事だと思うんでね。やっぱりね、この世代になってくると、自分の好きなことやって、飯食ってこれたってことはね、すごく感謝してるんですよ。親にも感謝してるし、子供がやりたいってことはやらしてあげたい。その代わり、だからこそおまえ自身でやりたいこと見つけろよってね、いつも言うんですよ。一回ぽっきりなんだから、人生って。好きなことやらないで、なにやるのって。「わかってるよ」とか言ってますけどね(笑)。
さっきもちょっと触れたけど、やっぱり音楽と役者のバランスだよね。事務所も4月1日から新しく始まって。20年こういう仕事やってきて、自分にとっての新しい転換の時期来てるなって思うんですよ。役者の部分もね、ちょっとなんか欲も出てきてるしね、今、映像がね日本でワンパターン化してるから、例えばスリラーっぽいのばっかりとかね、ほんとオーソドックスで、エンターテナー的なことをやってみたいと思うんです。今、ヒーローっていうのがいないでしょ。僕の時代の高倉健さんみたいな。難しい映画ってたくさんあるけど、生きざまとか男のカッコよさを単純に撮ることとかも僕は重要だと思うからね、そういう映画撮っていきたいですよね。まだまだがんばりますよ。

楽しみにしています。ありがとうございました。
Hakuryu
白竜
1952年佐賀県生まれ。78年ファミリーバンド「白竜バンド」を結成。翌年「アリランの唄」でデビュー。84年、崔洋一監督作品「いつか誰かが殺される」でスクリーンデビュー。89年、北野武監督作品「その男凶暴につき」で冷徹な殺し屋の役を演じ一気に注目を浴び、その後は俳優活動が中心となるが、最近は音楽活動も本格的に行う。
【白竜さんの本】

『誰のためでもない』(毎日新聞社)
【白竜さんのCD】

『いつのまにか少女は』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)

『take a deep breath』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
【白竜さん出演VIDEO】
![『その男、凶暴につき[1989年]』](http://122.200.201.84/interview/026_video_01.gif)
『その男、凶暴につき[1989年]』 監督:北野武