ネパール留学中、大陸をまたぐ"国際路線バス"を企画立案。1994年『ユーラシア大陸横断バス』、1998年『アフリカ大陸縦断トラック』を実現。2002年には『南米大陸縦断バス』を実現予定。
2013-04-26 号
白川 由紀(紀行フォトエッセイスト)
怒濤の年度始まり(笑)。
一大転機となった“家族ができる”という事件をきっかけに、一日にこなす雑用の量が、おそらく独身時代の8〜10倍くらいになっている気がする。
特にいろんな新規書類の山が押し寄せる4月はもうずっと布団にもぐり込んでいたいくらい(笑)。何も考えずに手と頭を動かし続けて、ようやく片付いた。
そうだった、もう5年も前になるんだな、保育園にお世話になり始めたのは。
最初に子どもを保育園に入れて一番驚いたのは、その保育園という場所の、今の社会の中での立ち位置だった。
なんといっても管轄は“厚生労働省”そして保育はその“福祉事業”。
だから保育園の立ち位置は、
『(お父さんの収入だけでは生活するに足りず)共働きをせざるを得ない(ちょっと気の毒な)ご家庭のお子様をお母さんに代わって預かる場所』だった。
自分で働くのが好きで働いてきて、それでたまたま結婚して、仕事は大好きだったからたまたま辞めずに働いてきたわけなのだけれど、だからこそ、“保育園”が“福祉事業”だったと気付いた時には、本当に驚いた。
あくまで“福祉”だから、中心となって子育てするのはもちろんお母さん、保育園はそのサポートをするまでの立場ですよ〜、こちらは“補佐”ですからやっぱりお母さんが主体となっていて下さいよ〜、というのが保育園のスタンス。
なればこそ、会合もたくさんあるし、運営自体にもかなりかまなくちゃいけないし、働くのと並行してやらなくちゃならないことがゴマンとある。
古き良き保育園に子どもを預けるお母さんからよく聞く話がある。
「買い物袋を下げてお迎えに行ったら叱られちゃったわ」
なぜって。
「本家本元、子育てがお母さんの仕事なんだから、お買い物に行くのは子どもを迎えに来た後にして下さいね〜!」というのが、保育園側の言いたいところ。
また別のお話も。
「私服で行ったら、注意されちゃったわ」
それは。
「たまに少しでも早く会社から帰ってきたのだったら、本家本元、子育てがお母さんの仕事なんだから、着替える前に迎えに来れたのでは?」というのが保育園が言いたいところ。
ところが先日。別の保育園に転園した友達の話を聞いてビックリした。
「いやあ今度の保育園、全然発想が違うから対応もまったく違ってちょっと驚きでね。最初に『この日本社会のために、お母さんたちは精一杯お仕事をして下さい。その間は私達保育のプロがお子様をお預かりします。これはプロ同士の “分業”、ですからお母さんたちは保育園でのことは一切、心配しないで下さいね』って挨拶があったのよ」
「だからね、まず最初の優先課題が働くお母さんたちの手間をなるべく減らすことに置かれているから、オムツに名前を書く事もないし、持ち帰ることもないし、シーツだって普通は家で洗うと思うのだけれど、そこは保育園がすべてやります、と。顔合わせも最小限にしてあるから、本当に時間にゆとりができて、イライラすることも減ったわ」
なるほど、ナルホド。
別の見方をすれば、もし保育園の運営に口を挟みたいお母さんがいたとしてもそれができないということだけれど、逆にあたしなんかは子どもの扱い方はひっくり返っても保育士さんたちにかなわないと思うし、そこまでプロ意識を持ってやってくれるのなら、逆にありがたいと思ってしまうのだけれど。
「確かにねえ。お母さんが時間をかけて子どものカバンや服を手作りしましょうという空気はなく、足りないものは買って済ませて時間を作ってそれを団らんに充てましょうというスタンスだから、合理的っちゃあ合理的よね。
そうねえ、だから人によると思うのだけれど、逆に母性が強くて子どもに手間も暇もかけたいと思う人にとっては、ドライな保育園に見えるかもしれない。けどねえ、なによりそこは保育士さんたちがプロとしてのプライドをしっかり持っているせいか、なんか生き生きとしているし、こちらも保育士さんたちに叱られるんじゃなくて、『お仕事ご苦労さまです!!』なんて褒められちゃうんだから、気分はいいわよね、明日も頑張ろうって思える。笑」
時を重ねて、保育園から幼稚園に転園したお友達の話も聞いた。
「これまた保育園とは随分様相が違うからビックリしたわー」
「なにが?」
「お母さんたちが仕事をしていない=時間にゆとりがあるためか……みんなで当番制で缶を踏んで潰す作業があるの」
「えーっっっ??笑 なんのために?」
「潰した缶をたくさん集めて売って、お正月のお餅代に充てるんだって」
「……(絶句)笑」
うーん、これはこれで長年のその園の慣例なのかなあ……?
たくさんのお母さん達の何十時間を使って一個何銭の作業を重ね、お餅を購入するよりも、別の仕事で得る1人200円を集めてお餅を買う方がイイと思ってしまうのは、合理主義でちょっぴりクールなあたしだからか!?
あれ? でもそもそも幼稚園は文部科学省の管轄だから、両親が共働きをしなくても済む豊かな御家庭のお子様が通うところなんではなかったのかな?
「それがねえ……おそらく最近は様相が変わってきていて、仕事をしなくてもいい裕福なご家庭というよりも、むしろ仕事に就くことができなかったお母さんの子どもが集まるという側面もあるのよお〜」
むむむむー。すごいなあ、時代の変化。
女性がこれだけ当たり前に働くような時代に入っていても、保育園と幼稚園のスタンスは昔から変わらずの慣例通り。だけれど、やっぱり時代の変化に応じて変われるところだけがジリジリと変わってきているんだなあ……。
みんな毎日小さな苦労を積み重ねているけれど……。
「とにかくガンバレ、フレーッフレーッ、お母さんたちーっっ!!」
ハイ、あたしももちろん、ガンバリマス!!
こちらは保育園も幼稚園もナシで頑張るお母さん。インドのラジャスターン州にて