ネパール留学中、大陸をまたぐ"国際路線バス"を企画立案。1994年『ユーラシア大陸横断バス』、1998年『アフリカ大陸縦断トラック』を実現。2002年には『南米大陸縦断バス』を実現予定。
2012-09-22 号
白川 由紀(紀行フォトエッセイスト)
今日も青い空を見ながら考える。
「夢を追うと、お金に追いかけられる」
「けれど、お金を追いかけると、夢をみたくなる」
昔からなぜか、おカネそのものには全く興味がなかった。
生活だけだったら、特におカネのかかる趣味もないので、自分には質素なもので十分。それだったら、アルバイトだけで足りちゃうということになる。
けれど。シャカリキになって働くのは、やっぱり別の意味がある。
つまり。道具としてのおカネとなると、ちょっと話が違うんだナ。
やりたいことをやるのに、おカネがゼロでもできるかっていうと、ゲンジツはまったくそうでなし。
だから。何かをやりたいと思った時にそれをやるためのおカネがないのは、非常に悔やまれる。だからやっぱり、道具としてのおカネを作るために、働く。
もう10年以上前から、60歳以上向けシェアハウスをやりたいナと思っていた。
だって、これからニッポンは超高齢化社会。
若者に頼るなんて、国力を削ぐことと一緒だから、60歳代以上は若者に迷惑かけないよう、お互いに助け合って生きてくのがイチバン!
それがコンセプトだった。
だから20代だったら屋根が一緒でいいけれど、60代だったらみんな人生観も天と地ほど離れちゃっているから、やっぱり屋根は別。
そうなると、水道電気が既にきている、あやしいホテルの離れがあれば、最高!
そこをリノベーションすればまさに夢が叶うと、勝手に妄想していた。
そんな時。先日たまたまその話をしたら、もう10年以上もカフェの立ち上げやらいろいろを一緒にやってくれている友達が、ポロッと言った。
「今、高尾山の方で、そういうホテルが売りに出されているらしいですよ」
思い立ったが吉日。すぐに現場に見に行った。
立地は料亭のお隣。
山間に佇む家屋なので、まず辺りの雰囲気が風情あり。
そこで素朴なギモンが湧いた。
「ところで。高尾山って、年間250万人、平日でも6000人が訪れるっていう話だけれど、なんで素敵なホテルが一軒もないんだ??」
あっても顔隠して入らなくちゃいけないアヤシイ物件。または、土木作業をする人が長期滞在するような宿のみ。あっても昭和40年代といった感じで、間違ってもお金を出して泊まりたいと思うようなところではない。
山肌に張り付くように建ったホテルは、300坪に8棟。
内装も見せてもらったら、エアコンもあるし、水回りもさすが土地があまっている高尾山周辺だけあって、広々。
いつも逆転の発想を好む、あたしの中の小人が囁いた。
「で……なんで高尾にはオシャレなホテルが一軒もないの?大観光地なのに」
近くには今年、インターチェンジがオープン。そして来年春には駅前に温泉施設までがオープンするという。
そして。たまにカフェにわざわざ地方から足を運んで下さる皆様は、いつも八王子駅周辺に宿を取っていた。
「都会からやってきて、わざわざお金払って高尾山に行った後、また町で眠りたいと思うかなあ……」
「自分だったら、子どもでもいればあんまり遠くへ出かけるのも大変だから、都心からなるべく近いところでチンマリと一泊二日、気分転換できる、普段の日常とまったく違う雰囲気のところがあれば、朝食付き7500円くらいだったら行っちゃうけれどナア……」
そもそも。今年で7年めを迎えているカフェも、そんな感じでスタートした。
ヨノナカ的には、じっくりと市場調査をし、本当に需要があるかどうか見極めた上で実行に移すんだろうけれど、どうも深く考えるのが苦手なあたしは、まず見切り発車をしてしまって、後でなんとか帳尻をあわせる。
大陸横断バスだって、カフェだって、すべてそう。
だからもちろん、後での苦労が多いのだけれど、それらはすべて実となって自分自身の栄養になった。
(うーん……この出逢いはまた、どうしたものかしら……)
計算上は高尾山にいらっしゃる1000人に1人が泊まって下されば、採算は合う。
しかも。都心からいらして下さる方たちに喜んでもらえる=あやしいホテルしかないという高尾山のイメージを、一気に覆すことができる=地方から家に訪ねてくれる友達を泊めてあげることができる=ささやかな地域貢献になる!「オット〜、イイ話でないの!」そして小さく呟いた。「お金さえあれば!」
こんな楽しい夢を、なんでみんな見ないのかな?とフシギに思って、いつもいろいろご指導頂いている経営者の方たちに、ニヤニヤしながら電話した。
「(……)なんですれど、これ、ステキなお話でしょ?笑」
すると、ニガ〜い声で答が戻ってきた。
「キミはねー、何歳になってもそんな夢みられるんだねー、シアワセだねー」
そしてすぐさま、お叱りが飛んできた。
「けれど。ゲンジツは甘くないんだよ、ちゃんとマーケティングしたのかい?だいたいね、ホテルの稼働率なんてのは3割、それで採算取れなきゃ潰れちゃうんだよ。夢だけみてちゃ、生きていけないよ、ゲンジツは厳しいんだ!!悪いこと言わないから、止めときなさい。目を覚ましなさい」
そうだった、ゲンジツは厳しいんだった。笑
キツくてネガティブでヒドイことを言う人ほど、実はとてつもなく優しいということも、今だったらよーくわかる。
きっと戦後、ニッポンのオジサン達は、自分の仕事を通じて他人をハッピーにできると信じて疑わず、みんなが楽しそうになる夢を見ながら頑張ったんだ。
それが実際やってみたら、ゲンジツはちょっと違ってた。
それが分かるからこそ、先にダメだと言ってあげたい。
けれど。先にダメと言われたら、小さな芽さえ出なくなる。
「でもそれが、今のニッポンなんだよなあ……」
ならば。「そのダメという根拠を一つ一つ、覆していけばいいんだ!」
もともとお金そのものにあまり意味を感じないあたしとしては、夢から始まる何かでないと、道を切り拓く力が出ないもの事実。
夢を叶えるためなら、ある程度の努力はできる。
というわけで。様々な可能性の扉を一つ一つ叩いている最中。
「まずはお金だな。これがなくっちゃ、何もできない。笑」
そんな時、地域活性化の助成金があるのを見つけた。なら、チャレンジだ!
さあて、どうなるか。また進展あらば、ご報告致しますね!
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アフリカで泊まったホテルは、本当に非日常の夢見る空間。こんな感じのところが高尾山にもあったら、泊まりたいっていう人はいると思うんだけれど、なあ……。