ネパール留学中、大陸をまたぐ"国際路線バス"を企画立案。1994年『ユーラシア大陸横断バス』、1998年『アフリカ大陸縦断トラック』を実現。2002年には『南米大陸縦断バス』を実現予定。
2011-06-24 号
白川 由紀(紀行フォトエッセイスト)
あたしは東京八王子市の高尾で生まれ育った。
途中、小学校の1年生から4年生までは山口県や広島県にいたから、ここ三年23区に暮らすようになって以外は、ほとんどの時間を緑いっぱいの山の中で過ごしてきたことになる。
っていうことも影響しているのか。
少々のことでは病院へ行かない。
風邪で熱が出ても寝てるだけだし、虫さされができても薬を塗ったことがない。
ヘンな人ですねえと思われちゃうかもしれないけれど、なんとなくそのくらい気にしないでいた方が、いろんなことがうまくいくような気がするから。
先日、こんなことがあった。
朝、熟れ過ぎのバナナを食べたのがいけなかったのか、保育園に行く直前に10ヶ月の長男に本当に“ちょっとだけ”ジンマシンが出た。
まあでも、お姉ちゃんも生後半年の時、アフリカでやはりバナナを食べてアレルギー症状が出たからまたそれと一緒だな、熱もないし、機嫌もいいから大丈夫モンダイなし!と、そのままいつも通り、保育園に登園した。
だって、仕事もあるからね。
そしたら……またやっぱりいつもの通りと相成った。
きた、携帯電話!そう、保育園からの呼び出しの電話だった。
といっても正確に言うと、仕事の打ち合わせ中だったので、電話が鳴っているのに気付かず、留守電が入っているのに気付いたのは電話を受けて4時間後。
あー、また今日に限って。締め切り仕事が山となっている。
(待てよ。4時間の間に再度電話がなかったってことは、大丈夫なのかな?)
でも。とりあえず保育園に電話を入れよう。
「スミマセン、遅くなりまして。お電話頂きまして……」
「Sくん、お医者さんを受診してもらいたいので、今すぐお迎えをお願いします」
「え? じゃ、熱が出てしまったとか?」
「いえ、熱はないですけど、Sくんのためにも一度受診してください」
いやあ、コマッタ!!
今日ばかりは、よっぽどのことがない限り、途中で戻るわけにはいかない。
平謝りに謝って、とりあえず物理的に距離があるのですぐ戻るわけにはいかないので、ベストを尽くして“なる早”で戻ることをお伝えした。
駅から猛ダッシュし、息を切らしながら保育園へ向かう。
「遅くなりましたー!!」
すると……けろりとした長男どのがこちらを向いてケラケラと笑っている。
(え?ジンマシンは?)
少しだけ足に残っていたけれど、ほとんど消えていた。
(なあんだあ!!やっぱり自然治癒力は赤ん坊でもあるんだな、よかった!)
とりあえず御礼を言って家に戻ってきた。
「おいおい、今日は君のジンマシン事件で、また大騒ぎだったんだよう」
なにも知らずに、ケラケラ笑っている長男どの。
結局、翌朝にはけろっと治った。
だからまた、いつも通り、規則正しく登園した。
すると……保育園の保健師さんが心配そうに言った。
「え?シラカワさん、今日はSくんをお医者さんに連れていかないんですか?」
えーっ??どうして???治ったのになんでまたお医者さん???
「だって、またいつどうなるか。一応受診しといた方がいいです」
あたしがアタマがおかしいのだろうか。
いや、はやまた、人の道にはずれた鬼母だってことかしら。
一日で消えたジンマシン。
消えてしまっても、やっぱりお医者さんへ行った方がいいというオススメには、アッパーパンチを喰らったような気分だった。
いや、思えば今回に限ったことじゃない。
ちょっと大きめの虫さされが数カ所あった時も、受診を勧められたっけ。
鼻水がずるずると出しながら耳を触っていた時。それも受診した方がいいですよととっても心配してもらった。
はて。
『虫さされくらい、自分で解毒機能を高めて治しなさいね』
『鼻水くらいアジアの子はいっつも出してるんだから、気にすることないよ』
ってのは、果たして酷なのかしら……!?
たまたまそんな話を友だちとしていたら、彼女はこんなことを言っていた。
「そうなんだよねえ、本当にみんな、昔もこんなにお医者さんに行っていたのかなあと疑問に思うほど、受診を勧められるよねえ、フシギなことに」
そうして彼女の長女もやはり、蚊に刺されて受診を勧められ、薬を5種類ももらってきた、と。
「傑作だったのはねえ、やっぱりうちも耳を触っているから耳鼻科に行った方がいいって勧められ、結局行ってみたら、お医者さんがなんていったと思う?」
はて、なんと?
「そこに耳があることを初めて自覚して、触ってるんです」
ひゃーっはっはっは。わざわざお休みとってお医者さんに行って、そのお答。
取り越し苦労も行き過ぎると大変!(笑)
世のお母さんたちは、それでもちゃんとみんなお勧めがあればお医者さんに通うんだから、本当にご苦労様以外になんと言えばいいんだろう!
そして友だちは言った。
「つまりねえ……。そうやってみんなが神経症気味に心配して、過剰にお医者さんに行くから、国民健康保険料があがっていくんだよね」
なるほど。
都会ではみんなが神経症気味になることで、経済もまわるってこと、か(笑)。
今朝のこと。両手を使うのがかなり上手になった10ヶ月クンは、一人でお座りをしながら、何かを真剣に触っていた。
ちんちろりん。ちんちろりん。
たまたま足を開いたそこについたブツをつんつんと、フシギそうに触っていた。
ぷぷぷぷ。
そうか。これこそ、そこに出っ張りがあることを生まれて初めて自覚して触っているっていう、あれか(笑)。
いやあ、そんなことを言って笑っているのは、鬼母だからかもしれないぞ。
ちゃあんとSくんのことを考えてあげるのなら、こう思うべきか。
「何度もおチ○チン触っているから、心配です。ちゃんと受診しましょうね」
うーむ。どうするべきか。あたしは真剣に悩んでいる(笑)。