

ネパール留学中、大陸をまたぐ"国際路線バス"を企画立案。1994年『ユーラシア大陸横断バス』、1998年『アフリカ大陸縦断トラック』を実現。2002年には『南米大陸縦断バス』を実現予定。
2003-08-01 号
白川 由紀(紀行フォトエッセイスト)
つい先日、仕事でフィジーを訪れる機会があった。
フィジーと言えば、オーストラリアの西北に位置する太平洋の島。
日本人が持つフィジーのイメージといえば、やっぱり南国のリゾート。
私もヤシの木とコバルトブルーの海をイメージしながら、現地に向かった。

飛行機のない時代に、彼らはどうやってこの絶海の孤島にたどり着いたのかなあ……。
↑Click
フツーの視点で見れば、フィジーは想像通りの南国リゾートだった。
けれど。私は町に入った時、ぞくぞくっと奇妙な寒気が全身に走った。
というのは、私がかつて訪ねたアフリカの空気とあまりにも酷似していると、直感が思ったからだった。
ポリネシア人がアフリカにルーツがあるという話は全く聞いたことがない。
……これはヘンなミステリーだぞ。
一般的に言われているのは、フィジー人を含む太平洋の島々に暮らす人々は、私達と同じモンゴロイドにルーツがあるという説。
前にそれを本で読んだ時、『だからハワイ出身の小錦は、もともとは私達の親戚にあたるくらいの近い関係なんだ』と書いてあり、その時に少し(本当にそうなんだろうか、私達日本人の顔と小錦の顔は随分違うけどなあ)と思ったものの、あまりにも説得力のある説明に、そうなのかなと適当に納得し、そのことはすっかり忘れていた。
ホテルに着いてすぐ、持っていたガイドブックを開いた。
やっぱり、通説通り、ポリネシア人はユーラシア大陸のモンゴロイドが次第に西へと移動し、島に定住するようになったとある。遺伝子工学が発達した近年になっては、ミトコンドリアDNAが台湾あたりのモンゴロイドとの共通性があると報告され、ポリネシア人のモンゴロイドルーツ説はより事実に近いと言われるようになった。
けれど。私の直感は、絶対にそんなはずはないと囁いた。
アフリカを再訪したんではないかと錯覚するくらいに、雰囲気があまりにも似ていたのだ。
これまでの経験上、街というものは、そこに暮らす人々の精神性が表に出たものだと私は思っている。
で、私は眼を皿のようにして、街を観察した。
お店の作り、看板に描かれた絵、モノの陳列の仕方までもが、アフリカにそっくり。
私は人を食い入るように視た。
縮れたアフロヘアも、昔アフリカで触らせてもらった感触と一緒。
頭の形について言えば、北部アフリカの人々は後頭部が若干出っ張っているのだけれど、南部アフリカの人は比較的そうではない。そういう意味では、南部アフリカの人と一緒。
非常に高い身長は、タンザニア以南の人々とよく似ている。
アフリカの人は腰骨の位置がかなり高いのだけれど、それも一緒。
そして、アフリカの人は屈むという時に膝をたたまず、腰をそのまま垂直に折り畳むのだけれど、その所作まで全く同じだった。
フィジーでは男の人達が伝統的にスカートをはいている。
その習慣は、マサイ族に代表されるように、比較的歴史を持つ民族がそれを踏襲してきた。
食にしても、またびっくり。
アフリカのシンプルな食事は、お肉とキャッサバ(イモの一種)。
なぜかフィジーでもそう。
さらに。会話をした時の人々の反応も全くアフリカ人を思わせた。
南部アフリカの人などは特に、こちらがボールを投げると1テンポおいて反応を返してくる人が多いのだけれど、そのゆっくりとした所作、または何が起きても瞬発的に反応することのない感じは、アフリカ・マラウィの病院で見たふとっちょ看護婦さんの反応と全く重なった。際だってマイペースな雰囲気が怖いくらい似ている。
もちろん、細かくみればいろいろ違うところもあるし、それぞれの人によって全部がこの分類に当てはまるわけではないのだけれど、あまりにも細かいところで似ている部分が多すぎた。
というよりも、私はあまり知識というものが頭の中に詰まっておらず、今までかなり直感に頼って生きてきた部分が大きいせいか、その直感がアフリカとポリネシアとの民族的なつながりを思わせたのだ。
今までのところ、学者さん達は彼らがアフリカから来た人だという説を打ち出している人は聞いたことがない。
私は一人で興奮した。それでも、コレという確証がまだなかった。
ただナントナク、ナントナク、強烈にアフリカとポリネシアが結びつく気がしただけだった。
けれど、それも、村の酋長の家に行って、私の勝手な説は間違っていないかもしれないと確信した。
フィジーの村には“カバの儀式”というのがある。
胡椒科の植物の根っこ(呼称:カバ)から作った飲み物を回しのみする儀式なのだけれど、来客があった時などには必ずこのカバの儀式が執り行われる。
酋長が声をかけると、村の旦那衆は拍手をした。
とその時。目を疑った。
彼らは、丸めた手の“ひら”の部分を使って拍手をした。
普通日本では、拍手というのは、手をまっすぐにしてパチパチとやるけれど、彼らはその丸めた手のひらの部分に空気を含むようにして、カッパカッパとやるのだ。
こっこれは……。私がアフリカ南部のナミビアのキャンプ場で朝見た光景と全く一緒だった。
確かあの時は、自分のボスに挨拶をする時に、彼らは手にひらを丸めて拍手をしていた。
私はその時に不思議に思って、尋ねた。「どうしてわざわざ手のひらを丸めるの?」
「この方が音が温かいから。それは心を表すからだよ。だって、パチパチって音は冷たすぎるよ」
30才くらいの若い青年が、それを言っていた。
私は全身に鳥肌を立てながら、同じ質問をフィジーの村でした。
地元の人はこう言った。
「だって、パチパチって冷たいじゃないか。こうしてカッパカッパやると温かい音が出る。これは心を意味する」
ポリネシアとアフリカ。地図で見たら、気が遠くなりそうなくらいに離れているのに、同じ台詞を聞くなんて。
これはただの偶然とは絶対に違う。やっぱり直感が感じたとおり、何か、アフリカとのつながりがあるはずだ。
なんだかとんでもない発見をしたような気分になった私は、フィジーの村人に片っ端から質問を始めた。
(次回に続く)