2001-10-24 号
吉村 智樹(ライター・放送作家)
笑い芸人には映画が好きな人が多い。有名なところでは『笑う犬の冒険』のミル姉役でいつも映画紹介をしていたウッチャンナンチャンの内村光良。もともと映画の専門学校に通っていただけあって超のつくマニアだ。マニアといえば関根勤・小堺一機もアクションからラブ・ストーリー、コメディ、SF、ミュージカルと古今東西の映画の話をしだしたら止まらなくなる。アクションなら今田耕司はチャイニーズ・アクション映画の大ファンで、自らも空手を習いはじめたほど。ダウンタウンの松本人志も雑誌で映画評の連載をやってるし、爆笑問題の太田光は黒澤明の影響を強く受けていると広言している。彼らの映画の話は、それ自体がエンタテインメントしていて、聞いていてとても楽しい。映画評論家が見落としていたヘンなところをツッコんだりするしね。
そして最近とみに映画狂ぶりが注目されているのがココリコの田中直樹と極楽とんぼの加藤浩次。「田中の映画好きは有名だけど、あの暴れん坊の極楽加藤までが映画マニアなの?」と意外に思うかもしれないが、実は渋いミニシアター系にも足繁く通う洋邦問わない映画マニア。ラジオではいつもその感動をおもしろおかしく披露。相手が映画にまったく興味がない山本圭壱なので、その「噛み合わなさ」がおっかしくてしょうがない(なんせ山本は『ベイブ』以外観たことがないのだ)。

そんなふたりの、お薦め映画ガイドが出た。『ココらくビデオ』は99年から今年までのビデオ化された最新作をサカナにアーだコーだダベりあう爆笑対談。紹介されているのはどれもビデオ化されたての新作なので、読んですぐレンタルショップに走れば借りられるものばかり。しかもどれもハリウッド大作ではなく単館ロードショー系の「知る人ぞ知る」な作品。『タイタニック』ではなく、登場人物が全部親指の『親指タイタニック』というふうにね。芸術の秋には相応しい一冊と言えるだろう(実際、ふたりが共通して好きな監督はデビッド・リンチとスタンリー・キューブリック。ふたりのフェイバリット・ムービーは『時計じかけのオレンジ』)。
しかし、やっぱり面白いのはふたりのやりとり。暴論が先走る加藤を田中がなだめたり、反対にセンチメンタルになるきらいがある田中を加藤がおちょくる。ココリコと極楽とんぼは意外と番組での接点がないので、この映画漫才は貴重だ。子供が好きで『ライフ・イズ・ビューティフル』に感動したという田中に加藤が「好感度上げようと思いやがって」とあらぬ攻撃。そうかと思えば『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』がちっとも怖くなかったと意気投合。原因は「魔女って言われても、日本人にとって魔女って言えば『奥様は魔女』とか『魔女の宅急便』とか可愛いイメージしかないから」と鋭い分析(これ実はみんなそう思ってたんだが、実際に口に出して言ったのはこのふたりが初めて。そういう点では貴重な映画論なのだ)。ほかにも笑わせながらも膝を打つ切り口が随所に飛び出す。
ちなみに、ふたりが「ココらくビデオ」に認定したのはコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』とUKロック満載の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の2本。これは借りに行かなきゃ!