2001-09-05 号
吉村 智樹(ライター・放送作家)
今ぼくは、ある17歳の女の子の才能に激しく嫉妬している。北海道在住の女子高生、加藤千恵さんにだ。
最近ホームページに自分の短歌を発表する人がたいへん多く、この現象をNHK教育テレビが今年1月、特別番組『電脳短歌の世界へようこそ』というタイトルで放送した。番組で取り上げられた歌人たちはみな個性的で素晴らしかったが、なかでも加藤千恵さんの短歌の凄さに視聴者はド肝を抜かれ、問い合わせが殺到。そのため、要望に応えなんと4度も再放送されたのだ。

加藤千恵さんは一見、それこそモーニング娘。の新メンバーだと言われたら信じてしまうような愛らしさと、イイ感じの素朴さを兼ね備えた女の子。世間的に言う「17歳の普通の女の子」だ。
しかし、そんじょそこらの「普通」などとはワケが違う! 普通ではあるが平凡ではないのだ。淡々とした日々の中にもさざめく心の揺れ、不安、緊張、怠惰、曖昧、焦燥、哀しさや空しさ、それらが転じた笑い、寂しさに耐えきれず心の拠り所を探そうとする力、なのに拠り所が見つからず手からするりと抜けてゆく無常、そして唐突にむごくやってくる「恋」……、「なんの変哲もない17歳の女の子なハズの私のエモーション」をキーボードで打ち込んでゆく。まるで言葉でシャターを切るように鮮明に。一本の映画を撮り終えるように練りに練られて。心の状態を表現するためにもっとも的確な言葉を拾い上げてゆく。「言葉の動態視力」とも言うべきものがズバ抜けて優れているのである。
重要と 書かれた文字を写してく
なぜ重要か わからないまま
シャーペンの芯でノートをひっかくようにしながら黒板の文字を書き写してゆく彼女。息の詰まるような緊迫した雰囲気の教室。そしてそこに書き写される文字たちと自分との果てしない距離。固唾を飲む一首だ。
泣きたいと 思っているのに
電話や宅配便にジャマされている
悲しみに浸る時間は実は甘美だ。しかし現実はそんないとますら与えてはくれない。「悲劇の女王」モードに浸りたい時間が呼び鈴一発で崩壊するさまがユーモラスに表現されていて、そしてそのユーモアがまた哀しい。
作風の振り幅も広く、自分勝手じゃない。誰かとつながっていたいという想いがあるから、誰にでも共感できる短歌に昇華している。自分だけでなく人を思い遣っているのだ。だから彼女の短歌はエンタテインメント。17歳のもろさを表現しながら、実はかなり頑丈な作家なのではないかと見た!