2001-08-22 号
吉村 智樹(ライター・放送作家)
皆さん、以前このコラムで女性冒険家の白川由紀さん著『世界ノホホン珍商売』(共同通信社)を取り上げたのを憶えていますか?
ユーラシア大陸横断10ケ国、アフリカ大陸縦断14ケ国を駆け抜けた彼女のエッセイは抱腹絶倒かつパワフル。夏バテにあえぐ皆さんにぜひ読んでいただきたいスタミナたっぷりの名著。その白川由紀さんから、なんとお礼のメールが来た! たまたまこのHPを読んだお友達から聞き及び、早速返事を書いてくださった。メールの文面から明るく屈託ないお人柄が伝わってくる。実は僕はメールをいただいたまさにその時、完全に体調を崩し、ひとりぼっちの部屋で這って歩くのが精一杯だったので、力を分けてもらった気がした。

それにしてもこのニッポン、僕同様こんなにも人が「体調が悪い。体調が悪い」ってこぼしてる国は他にないのでは? 衛生管理が行き届き、見た目にもこぎれいな食べ物を口にしているはずの僕らより、世界のいたる所で砂だらけの食べ物を口にしている白川さんのほうがよっぽど元気なのは何故。同じアジア諸国ではそのへんいったいどうなのか。気になった僕は東京農業大学教授・醸造食品栄養学の権威で、テレビの紀行番組でもお馴染みの小泉武夫さん著『アジア怪食紀行』を読んでみた。そして驚いた!
小泉さんの栄養学は、机上のデータより「とにかくひたすらなんでも食う」ことで理論を構築実践してゆく「食の格闘家」。“味覚人飛行物体”“ジュラルミン製の胃を持つ男”と異名をとり、とにかく見た目に不気味すぎるアジアの食べ物を(ときには食べ物ですらないものを)徹底的に食べ尽くすのだ!
ヘビ、ネズミの薫製、トカゲの春巻、昆虫たっぷりのパン、ニワトリの胎児、汲み取り便所の匂いがする発酵させたエイ、豚の血でできた豆腐、羊のアソコなどなど屋台で売られるアヤシゲな食べ物を見つけると嬉しくて仕方ない。それだけでなく宿舎にヤモリが出たならばソク胃の中へ。食堂のない中国奥地の村ではインスタントラーメンに幼虫をたっぷり乗せ、自ら「怪食」の新開発に挑む。
しかしこれらは単なるゲテモノではない。現地の人々は昆虫やハ虫類のタンパク質は人体にたいへんよいことを知っている。発酵食品が醸し出す強烈なアンモニア臭が腐敗をふせぐことも。またどの国も「生を授かる以上、頭の先から脚の先まで食べ尽くすことが最大の供養」であると考えている。食べること、すなわち生きることなのだ。
そう考えたら、たいしてお腹も減っていないのに薬品まみれのジャンクフードをしょっちゅう頬張っている日本のほうがアジア諸国から見ればよっぽど「怪食」の国なのかも。