2003-01-21 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
北朝鮮の核問題は、先週また大きな動きがありました。強硬策一辺倒だったアメリカが大幅な歩み寄りを見せたのです。
ブッシュ大統領は14日に、北朝鮮が核開発を放棄すれば、エネルギー支援などを含む「大胆なイニシアチブを検討する」と語りました。さらに17日には、アメリカのアーミテージ国務副長官が、さらに踏み込む形で、北朝鮮の体制存続を容認する発言を行いました。
北朝鮮が何より望んでいたのは、現体制の存続であり、そのためのエネルギーや食糧支援です。喉から手が出るほど欲しかったであろう、アメリカの不可侵(=先制攻撃をしないこと)の確約という提案に対して、しかし、北朝鮮はいまのところ慎重に検討する姿勢を見せています。
というのは、アメリカは、対話の姿勢をみせながらも「先に核を放棄した後に対話をする」という立場を変えていないからです。北朝鮮はあくまで、アメリカが先に不可侵を確約することが、核問題解決のための条件だとしており、双方の前提が真っ向から食い違っているのです。
アメリカが対話のテーブルに大きく近づいたこと、また北朝鮮が核問題解決の条件をはっきり提示してきたことは、大きな前進でしょう。しかし、いみじくも韓国の次期大統領ノムヒョン氏が語ったように、「双方に自尊心があり、相手への不信もある」ため、微妙な意思疎通のズレが、再び状況を悪化させないとも限りません。関係諸国が一致団結して、北朝鮮・アメリカの双方に働きかける作業は、これからも続ける必要がありそうです。
その韓国の次期大統領の特使が、非常に意味深い発言をしました。この発言によって私は、今回の北朝鮮問題は、かつてない危機でもあり、日本にとって新たな外交のチャンスでもあるのではないか、という考えを持ちました。
その発言と言うのは、韓国特使が先週の小泉総理の靖国神社参拝について、「北朝鮮問題があるので、(小泉総理を次期大統領の就任式典に招くにあたっての)大きな障害にはならないだろう」と語ったものです。
韓国の政治家が日本メディアに対し、靖国神社参拝を「大きな障害ではない」と堂々と発言するなんて、これまでの常識では考え難いことです。
けれども「韓国と日本は、長く互いの不信のもとになってきた歴史問題をも超えたところで、結束して、関係諸国に働きかけなければならなくなっている」——そうした認識を、次期政権の特使という立場上、歴史問題には敏感にならざるを得ないであろう韓国の政治家が、北朝鮮の核という差し迫った危機の存在よって、公然と示したわけです。
このことは、我々が直面する北朝鮮の危機が、歴史問題を乗り越える方向に両国関係を変化させつつある、と捉えることができるかもしれません。今回の北朝鮮問題は、日韓両国が“同じ安全保障の土俵上にある”という意識を共有し、この先の協力の枠組みを作っていく上で、実践的かつ有効な試金石になっている、と考えることもできると思います。
だからこそ、韓国と日本、そして東アジア全体が、今後、安全保障や経済など共通の利害のために有効な協力ができるよう、あらためて今回の北朝鮮問題をいかに解決するか、その重要性が問われている、という気がします。
すでに韓国からは、北朝鮮のエネルギー問題解決のため、核開発中止の見返りに天然ガスパイプラインを朝鮮半島を縦断して九州まで通す、という提案が出されています。仲介に入ったロシアやアメリカからも、すでにそれぞれオリジナルの提案が出されていますが、日本からはまだありません。日本政府はまず、日本の立場と問題解決へのアプローチを提案によってはっきりさせ、韓国と戦略をすり合わせるべきではないのでしょうか。