2002-11-19 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
先週の火曜日以降、拉致問題をめぐって、新たな事実の判明や衝撃的な報道があり、国民世論はますます北朝鮮への強硬姿勢に傾いたようです。松木薫さんの遺骨がほぼ100%別人のものであると判明し、また横田めぐみさんについては、死亡したとされる94年よりも後、97年に北朝鮮の政府関係者の発言で生存が確認されています。
北朝鮮が出してきた安否情報が“いい加減なものである”と多くの日本国民が察知したことでしょう。
北朝鮮は、日本に帰国した5人をいったん北朝鮮へ戻さない限り、安全保障協議、すなわち核とミサイルの問題について“交渉をしない”と脅しをかけてきました。しかし、日本国民の間からは、「交渉再開のため日本も譲歩すべきだ」といった意見は聞こえてきません。では、どうやって交渉を進めていけばいいのでしょうか?
「朝まで生テレビ!」の議論の枠組みに従って、日本の交渉のプロセスを考えて見ましょう。日本にとって、北朝鮮との国交正常化交渉のスタート地点は、いまや拉致問題の解決だとはっきり言えそうです。
もちろん、死亡したと伝えられた拉致被害者たちについて、徹底的な再調査を行う必要があります。そして、拉致問題の解決とは、すべての拉致被害者が日本に戻ってくるだけではなく、家族とともにどのように生活するか、自由な選択ができる環境を整えることだと、少なからぬ日本国民が認識するようになっています。
しかし、北朝鮮にとっての交渉のゴールは、日本から経済援助を引き出すこと。その先には、軍事偏重により危機に陥った国家経済を救い、現在の金正日体制を維持する、という目的があるようです。少なくとも拉致問題の北朝鮮にとっての解決とは、情報提供や拉致被害者の帰国によって日本を納得させ、経済協力をさせること、でしょう。
しかし一方で、拉致という国家犯罪を認めることは政権の存立を揺るがしますから、「まさにいま北朝鮮は、どこまで日本に妥協できるかのギリギリの線を探っているところだろう…。」(拓殖大学教授 森本敏さんの発言)と思います。
しかし、今回5人を北朝鮮に戻さなかったことによって、「日本は拉致問題でどこまで要求してくるかわからない」という印象を、北朝鮮が持った可能性がある、という指摘もありました。
“何か得られる”という感触がないと、交渉は進展しないだろうから、何をどこまでやれば経済協力の約束ができるか、交渉の途中経過を描いた「ロードマップ(地図)を示すべきだ…。」(拓殖大学教授 重村智計さんの発言)ということです。
確かに北朝鮮の暴発を防ぐには、“交渉で打開する見通し”を与える必要がありそうです。北朝鮮は核開発を認めたことで、アメリカ・日本・韓国からの重油供給がストップしてしまいましたから、ますます切羽詰ってくるに違いありません。
金正日体制について何らかの保証を示唆するのか、あるいは、拉致問題さえ解決したらまずは食料のみ援助を行う等と明言するのか、方法はいくつか考えられますが、その前に日本が持っている交渉のカードについて、よく検討してみましょう。
来週もこの続きです。