2002-10-08 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
私事ですが、今週から毎日夕方のニュースを担当することになりました。スタジオでニュースを伝えるばかりでなく、現場からリポートすることも多くなりそうです。現場で得られたことや感じたことを、このコラムでもみなさんにお伝えしていきたいと思っているので、チャンスがあったら、午後4時55分からのスーパーJチャンネルを見てみてくださいね。
さて、前回の約束通り、9月末の朝まで生テレビの議論についてお話しましょう。テーマは“北朝鮮”と“米のイラク攻撃”をめぐる、日本の外交でした。どちらも日本にとって火急の外交問題だということは、みなさんもお分かりになると思いますが、いずれもアメリカの態度が今後の鍵を握っています。
まず北朝鮮外交については、今回の“小泉訪朝”の舞台裏で繰り広げられていた、“外務省VS小泉総理”のバトルについて、興味深い話がいろいろと出てきました。北朝鮮に対して、あくまで友好的に会談を進めようとした外務省の思惑に反し、拉致問題を念頭に、厳しい姿勢を貫いたのは、小泉総理本人の決断だったようです。
死亡年月日のリスト公表が遅れたのは、外務省サイドが、拉致問題の解決よりも、日朝共同宣言を無事発表することのほうに重点を置いていたためだ、という批判が相次ぎました。
今回の北朝鮮外交の進展によって、外務省は、鈴木宗男議員との関係や、瀋陽領事館の事件などで重ねてきた失点を一気に取り戻そう、と考えていたかもしれません。しかし、政治家に重要な情報を伝えない秘密主義や、自らの落ち度を明らかにしない隠蔽体質は、今回も相変わらずで、かえって印象を悪くしてしまいました。
改革を進める外務省が本当に変われるのかどうか?という問題は、それはそれで重要なのですが、日本は北朝鮮外交において、より早急に決断を迫られている難問をいくつも抱えています。その一つが、番組の中でも議論になった“北朝鮮に対して今後どこまで責任追及をするのか?”という問題です。
拉致被害者の家族の心情を考えれば、北朝鮮が拉致を認めた以上、徹底した真相解明と拉致被害者の引渡し、さらには何らかの補償を求めるのが当然でしょう。しかし、北朝鮮とは現時点で国交がなく、まさにこれから国交正常化交渉が始まります。つまり、何をするにもお互いが前提とする共通のルールがない、という状態なのです。
たとえば真相解明について考えてみましょう。先々週の金曜日には、拉致被害者のうち、死亡したとされる方たちの死因と遺骨の所在について、日本政府の調査団に対し、北朝鮮側から詳細な情報を伝えられましたが、その内容は、不審な点が数多く見られるものでした。
しかし、それが信用できないからといって、相手国にこちらの国の警察が乗り込んで捜査するのは、ルールにのっとったお互いの了解がない限り、内政干渉ということになってしまいます。
さらに交渉の過程で、拉致被害に対する補償を日本が求めた場合、逆に北朝鮮が、今回の訪朝に際して“求めない”と表明していた戦後補償を、新たに求めてくる可能性もないとはいえません。戦時中、日本に連行された朝鮮人は数百万人にも及ぶと言われていて、すでに韓国との間では、補償が経済協力に置き換えられた経緯があり、簡単に日本政府が「補償します」と言うわけにはいかないのです。
また北朝鮮が突如、拉致を認め謝罪を表明した背景には、北朝鮮経済が危機的状況にある為、と言われています。国家の犯罪を認めてでも、日本から食糧援助と経済援助(象徴的に“コメとカネ”と言われています)を引き出したい北朝鮮に対して、日本は納得いく答えが出るまで支援を行わない、という選択も出来るでしょう。
しかし、支援が手遅れになれば、最悪の場合、北朝鮮国家が崩壊し、大量の難民が押し寄せてくる可能性もあります。これは、アメリカが“悪の枢軸”北朝鮮を攻撃して戦争状態になっても、同じことがおきそうです。
日本はこれらの状況を踏まえた上で、北朝鮮との関係を考えなくてはなりません。果たして日本は、どこまでの責任を北朝鮮に求めることができるのでしょうか? アメリカ政府は、北朝鮮をどこまで本気で攻撃するつもりなのか、それに対して、日本はどう対応するべきなのでしょうか。来週も、この問題についてとりあげます。