2002-09-03 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
先週金曜日、「朝まで生テレビ!」の放送日に、ビッグニュースが二つ飛び込んできました。一つは、東京電力が原子力発電所のトラブルを隠蔽しようとした疑惑、そしてもう一つが、小泉総理の北朝鮮訪問決定のニュースです。
番組のテーマが『政治の劇場化は本当に悪いのか?!』というものだっただけに、訪朝のニュースについては、いかにも小泉総理らしいという印象を私は持ちました。
総理がどのような理由で訪朝を決断したのか、その真意は現在のところ明らかではありません。しかし、日本人拉致問題などで国交正常化交渉がストップしている北朝鮮に、突如、総理が出向いていくというニュースは、世間をあっと言わせるのに十分なものです。
水面下の交渉をぎりぎりまで完全に隠しておく、という手法もさることながら、“この時期”ということも、政権にとっては、ショーアップの効果を最大化にするうえで大切だったのではないでしょうか。
というのも、小泉政権は誕生から1年半が経とうとしていますが、成果がなかなか国民に見えて来ないからです。
発足時には、痛みを伴う改革に耐えれば経済がよくなる、ということで期待を集めたものの、今だ景気が上向く気配は一向に無く、改革のあらゆる場面に停滞が蔓延している、という印象が国民の間にひろがっています。
そんな中での訪朝は、経済や改革の停滞を打破するイメージをもたらしてくれることでしょう。さらに、外務省と官邸以外には一切情報を漏らさず訪朝を決定したことで、総理の強いリーダーシップも印象付けられます。
今後、秋には内閣改造や国会議員の補選、臨時国会などが予定されていますから、国民の支持を再び小泉総理に集めておく上では、まさに絶妙のタイミングではないでしょうか。
もちろん、総理一人の決断で時期を選べたわけではないでしょう。北朝鮮の国内事情の変化や、イラク攻撃を控えたアメリカの思惑、日本国内の外務省の狙いなど、様々な条件が重なったところに、小泉総理という要素が加わることで実現したはずです。
ならばこそ、ますます国民という“観覧客”を飽きさせない劇場化政治と、小泉総理は切っても切れない縁がある、と思ってしまうのです。
しかし、政治の劇場化には良い面も悪い面もありそうです。たとえば、今回の訪朝でいうと、“実は北朝鮮との交渉で、成果が得られるという見込みがまったくなく、ただ目に見える結果を急ぎ手に入れたいために、日本の最高責任者である総理が北朝鮮へ出向き、功を焦って、拉致疑惑などの問題を解決しないまま、支援だけを約束してしまう”、というシナリオが懸念されています。
国民の目を意識しなければ、成果を焦ることもないでしょう。しかし、劇場化された政治においては、国民に分かりやすい目に見える成果が必要です。そうして成果を焦れば、北朝鮮の本音を見失う可能性が、高くなってしまいそうです。
本質的なところで、政治の劇場化はどのような功罪をもたらすのでしょうか?また、マスコミを通して政治の情報を得るとき、みなさんはどんなところに気を付けたらいいのでしょうか? 来週、この話をしたいと思います。