2002-08-27 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
朝夕すっかり涼しくなって、夏の終わりを感じるようになりましたね。高校生のみなさんは、宿題や夏期講習の追い込みで大変な頃だと思います。そこで今週は難しい話をお休みして、私がアナウンサーになったきっかけを、お話ししようと思います。
というのも、先週末、私がアナウンサーになるきっかけを作った先生に、久しぶりにお会いしたのです。初めてお会いしたのは、私が中学3年生の時。当時大学生だった先生は、教育実習生として、私のクラスを担当されました。今は神戸大学で教鞭をとっていらっしゃいます。
もちろんその当時、私はテレビに出る仕事をするなんて夢にも思わず、アナウンサーという仕事をしたいと思ったこともありませんでした。
先生は面倒見がよく、とても面白くて、私は友達グループと一緒にふざけたり冗談を言ったりして、すっかり先生と仲良くなりました。そして、中学を卒業してからも、たまたま連絡が取れていたのです。
それは、私が高校生になったある時、先生が、駅の自転車置き場で私の名前が書いてある自転車を見かけて、名刺を残してくださった、という偶然のおかげでした。大学に入学した時には、お祝いまでしてくださったのです。
更に時は流れて、私が大学2年生のある日、とあるテレビ局の方から、「自分の大学のキャンパスをリポートしてくれる女子大生を探しているんだけれど、手伝ってもらえないか?」と、一本の電話を頂きました。
その方は、先生のとても親しいご友人で…、と言っても、実は先生とは教育実習の仲間で、隣のクラスの担当だったのです。先生とその方は、当時も今も、ずっと仲が良いんです。
そのキャンパスリポートの話を頂いた頃も、テレビの世界にはほとんど興味がなく、ただ言われた通りのことをやっただけでした。ところが、たまたま番組リポーターが入れ替わる時期だったこともあって、それから半年間、その番組でリポーターを務めることになったのです。
偶然に偶然が重なって、私はテレビの世界を半年ほど垣間見ました。もし信頼する方からのお話でなければ、その頃“虚業”だと思っていたテレビに対して、私は警戒心を解かなかったでしょう。でも安心してのびのびと、テレビの仕事を体験したおかげで、テレビは楽しいな、と思うようになったのです。
その一番の理由は、取材やロケで毎回違う場所へ行って違う人に会い、新鮮な出会いがいつもある、ということ。実はそれまで、私は初対面の人と話すのが、あまり好きではありませんでした。緊張するし、何を共通の話題にしていいのか、わからなかったからです。
ところが、たまたまその番組は、マイナースポーツを取り上げる番組だったので、取材相手がテレビに向かって喋りたいことを、どんどん喋ってくれました。そこで、私は生まれて初めて、知らない人の話を聞くのが面白い、という感覚を味わったのです。
先生と久しぶりにお会いして、私は、中学生から今までの時間を振り返りました。そして改めて、人との出会いが、今の私を作ってきたこと、そしてその出会いは、出来事が起こるまで、何かあると予想もしないような、ごくありふれた身近なものかもしれない、ということを感じました。
そして出会いとは、出会った後もその人とつながっていてこそ、活きてくるものだということも。人と出会い、関係を育てて行くことは、私達の人生を変える力を持っているのですね。皆さんも、是非“偶然”を大切にしてください。