2002-05-28 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
いよいよサッカーW杯が、今週開幕します。感動や興奮への期待もさることながら、日本社会に、これまで想像もつかなかったような現象や事件が巻き起こってしまうのではないか? 私としては、そちらの方が気になってしまいます。アジアに始めてやってくる世界最大級の”お祭り”を、6月の閉会式までしっかり見届けたいと思います。
さて今週は、先々週までお話していた有事法制関連3法案に、話題を戻しましょう。これまでの話の中で、日本の武力行使が認められるかどうかの線引きには、”個別的自衛”か、”集団的自衛”か、という区別のほかに、”日本有事”と”周辺事態”の区別があることにふれました。
まず、周辺事態では、武力行使が認められません。日本はアメリカ軍の後方支援のみが行えます。これは、憲法が禁じている集団的自衛権の行使を避けるためです。しかし、日本有事では、日本は個別的自衛権を発動して、武力を行使することが出来ます。
日本有事と周辺事態、この二つを区別することは、憲法を守って武力行使の基準をはっきりさせる、という意味で、周辺国や日本国民から理解を得るために、非常に重要なものです。
その重要な区別が、今回の有事法制のなかでは曖昧になっている、と指摘されています。それぞれの事態は、法案のなかでどのように定義づけされているのでしょうか。
”日本有事”は、今回の有事法制関連3法案のうち「武力攻撃事態法案」で、「武力攻撃事態」として定義されています。
法案によれば「武力攻撃事態」は、
”わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、または武力攻撃のおそれのある場合や、武力攻撃が予測されるに至った事態”です。
一方、”周辺事態”は、99年に作られた「周辺事態法」で
”そのまま放置すれば、わが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある場合”と定義されています。
みなさんは一読して、それぞれの対応する事態のちがいが、わかりますか? 正直言って、文言を読んだだけでは、何が違うのかはっきりしません。果たして、この法案のままで、武力攻撃事態と周辺事態の区別ができるのでしょうか。二つの事態は、武力行使が出来るか出来ないかという点で、大きなちがいがあるのに、これほど区別が曖昧では、事実上、武力行使の基準がないのと同じことになってしまいます。
小泉総理は、「状況によっては武力攻撃事態が周辺事態にもあたる場合もありうる」としています。周辺事態と武力攻撃事態は併存する、あるいは、周辺事態は武力攻撃事態に含まれる、ということです。ならば、日本が有事であるという判断基準を、政府はどう考えているのでしょう。次回、国会の答弁の中から探ってみましょう。