2002-03-19 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
先週もまた、月曜日の証人喚問に始まり週末の離党会見まで、テレビは鈴木宗男議員の話題で持ちきりでした。ニュースにもワイドショーにも、たくさんの野党議員が登場して、鈴木議員の疑惑を厳しく非難、さらに新たな疑惑も出てきて、メディアから目が離せない1週間でしたね。今週は、議員辞職をめぐって、与野党の攻防戦になりそうです。
本題に入る前に、議員辞職というものについて、ごく簡単に説明しておきましょう。鈴木議員の議員辞職を求める野党は、「議員辞職勧告決議案」を、議院運営委員会というところに提出しました。この案は、たとえ委員会を通過して本会議で採決されても、あくまで「勧告」です。議員を即クビにできるような強制力はなく、無視したところで、罰則があるわけではありません。選挙によって、国権の最高機関である国会の一員に選ばれる国会議員の立場は、とても手厚く保証されているのです。
さて、鈴木議員は、金曜日の離党会見では、涙を流しながら、自分は北方領土返還のためにがんばってきた、悪いことをしているという認識で政治をやってきたことはない、外務省などに、自分を排除しようとする何がしかの意図がある、といったことを切々と訴えました。みなさんは、あの離党会見、どんなふうに見ましたか? 実は、私のまわりで、「鈴木議員がかわいそう」という感想をもった人が少なからずいたのです。
私はちょっと驚きました。確かに哀れさにはあふれていましたが、恫喝と泣き落としで利権に食い込んだ、とも言われている人です。映像の印象に流されず、何をやってきた人か、よく考える必要があるでしょう。
けれども「かわいそう」という見方にも、頷ける部分はあるのです。この1週間、野党の厳しい追及のなか、自らが所属する自民党の議員からも「議員辞職すべき」という、突き放した言われ方をされ、蜜月関係だったはずの外務省からは、7年も前の暴行事件が暴露されました。まさに孤立無援の四面楚歌です。
しかも、自民党の歴史の中で、鈴木議員だけが突出して非難を受けるような悪事を働いていたのかどうか…。程度の差こそあれ、鈴木議員がやってきたことは、自民党の中で当たり前のように行われていたことではなかったでしょうか。
官僚との癒着、地元への利益誘導、というような政治のスタイルを作ってきたのは長い間、政権政党の座にあった自民党と言えるでしょう。自民党の有力議員のほとんどは、そうした利権の構造を利用して、“大物”といわれる立場を築いてきたとみられています。(その構造がいまだに温存されているからこそ、「自民党を潰してでも改革する」と言う小泉総理が、国民からの支持を集めるのでしょう。)
鈴木議員は、それにしても、やり方にかなりあからさまなところはありますが、そうした“古いタイプの政治家”のうちの一人、one of themである、と言うことができるでしょう。
つまり、鈴木議員と同じようなことを、大なり小なり多くの議員がやってきたと考えられるなかで、鈴木議員だけが槍玉に挙げられている、という構図があるのです。これを指してかわいそうと言うのなら、私もわかる気がします。
しかし、彼の立場を哀れに思うからといって、彼の国会議員としての責任が軽減されるわけではありません。国会議員は国と国民に対して責務を負っているのです。それを裏切るような疑惑の解明に、鈴木議員は誠実に協力しているでしょうか。証人喚問での態度を見る限り、私にはそうは思えません。
証人喚問で「忘れた」と言っていた部分は実際どうだったのか。関係者が認めているのに本人が否定している事実は、どうなのか。なぜ鈴木議員が、不自然なほど強く官に介入できたのか。明らかにすべき点は、まだまだ残っています。仮に同情すべき部分があったとしても、与野党を問わず国会議員は、厳しい追求を続けるべきでしょう。
むしろ私が恐れるのは、鈴木議員が議員辞職をすることで責任ある立場から離れ、そのことによって、司直の手が入らない限り、疑惑を追及する動きがストップしてしまうことです。
鈴木議員一人が責任を取って辞職したからといって、政と官の癒着がスッキリ解消されたということでは、まったくありません。
テレビの前で見ている私たちは、この騒ぎが去ったあと、何がいったい変わったのかを、見届けなくてはいけないのです。果たして、自民党は次の選挙で、鈴木議員をどう処遇するのでしょうか…。