2002-03-05 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
鈴木宗男議員をめぐる疑惑で、外務省の内部調査が昨日発表されました。といっても、すでに衆議院で鈴木議員を証人喚問をすることが、与野党の間で約束されています。疑惑の真相解明がどうなるかは、今週中にも行われる証人喚問を待ちたいと思います。
さて、いよいよ金融危機が噂される3月に入りました。株価が気になるところですが、今回は、経済と”信用”ということについて少し考えてみましょう。
少し前になりますが、今年2月に「雪印食品」が、牛肉や豚肉のラベルを偽って、スーパーなどに出荷していた事件がありましたね。2月の終わりになって、今度は「スターゼン」という業界第三位の食肉卸売り会社が、やはり牛・豚・鶏肉のラベルを偽っていたことがわかりました。
お肉は、一目見ただけでは、産地や生産方法がわからないものです。ですからお肉の品質を知るには、商品ラベルだけが頼り。その表示が偽りだったのでは、いったい何を信用してお肉を買えばいいのでしょう?
お肉だけではありません、お野菜だって、様々な加工食品だって、私達は商品ラベルの表示を信用しているからこそ、それに見合うだけのお金を払って、商品を買うのです。私達は、モノの流通を最初から最後まで見ることが出来ません。だから、売っているお店や、商品ラベルを信用して、商品を買うのです。
商品ラベルに限らず、モノやお金がやりとりされるときは、この”信用”というものが欠かせません。買った商品が払ったお金に見合う価値があること、お金を貸したら利息がついて返ってくること、企業の収支報告が法律に則って作られ、正しく実情を表していること・・・こういう市場でのルールがちゃんと保証されているからこそ、私達は、物を買ったり、銀行にお金を預けたり、投資したりできるのです。
モノを買ったり、仕事をして賃金を手にしたりして、市場に参加している私たち消費者や、企業、生産者等の間に、互いの信頼関係が成り立っていなければ、モノやお金のやりとりはスムーズに行われないのです。
ところが今の日本は、困ったことに、経済活動を成り立たせている”信用”がいろいろなところで揺らいでいる状態です。とりわけ、銀行や政府に対する不信は、日本経済に重くのしかかっています。
たとえば、不良債権問題です。10年前にバブルがはじけてから、つい最近の金融庁の特別検査まで、銀行の不良債権に対する評価は、同じ企業に対するものでもまちまちで、銀行がちゃんと不良債権を査定しているかどうか、疑われていました。
そこへ去年、他と比べればあまりひどくはない不良債権と評価されていた大手流通企業が倒産してしまい、銀行の査定に対する信用は大きく失われてしまったのです。だから、銀行が今になって大丈夫だと言っても、残念ながら、なかなか信用されないのです。
しかも、大きく膨らんだ不良債権の処理を進めれば、大手銀行でも資本不足に苦しみます。もし突然に巨額の負債を抱えた企業が倒産すれば、経営危機に陥るかもしれません。銀行の経営は安定して続くものだ、という信用までが、いま揺らいでいるのです。
日本政府の信用も、また疑われています。97年に金融危機があったとき、銀行に公的資金を注入し、「もう大丈夫!」と公言したにも関わらず、再度金融危機になってしまいました。
「不良債権を減らす」と世界に対して公言したのに、結局は増える一方です。また、国債残高(国の借金の残高)が2002年度末で414兆円に上り(ちなみにここ10年の税収の平均ははおよそ51兆円)、このままでは返せなくなってしまうのでは?と、不安視されています。
日本の信用がなくなれば、私達の持っているお金は、ただの紙切れになってしまいます。というのも、お札は作るのにもともと十数円しかかからない紙。それに特別な価値を与えているのは、まさに日本政府の”信用”なのです。
日本政府は信用を取り戻す有効な手立てを、まだ示していないように見えます。でも、市場は待ってはくれません。”信用”を失った雪印食品は、2月22日に事業の継続を断念する、と発表しました。
一度失った信用を、国民・消費者から取り戻すという事は、それ程難しいという事なのです。