2002-02-26 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
言ったか、言わないか。その溝はいっそう深まりました。アフガン復興会議へのNGO参加拒否問題に端を発した、田中眞紀子・元外務大臣VS鈴木宗男議員のバトル。ついに20日、衆議院予算委員会の集中審議での参考人質疑という形で、時間差はあったものの全面対決しました。
この日、国会中継の視聴率はなんと14%(普段は一桁)。夜放送のドラマのように、たくさんの国民が注目していたのです。そこで2月末の朝まで生テレビは、この参考人質疑を受け、急遽予定を変更して「小泉総理は“抵抗勢力”か?!」というテーマで討論が行われました。
改革の先頭に立つはずの小泉総理が”抵抗勢力”とは、どういう意味でしょうか。
まず、今回の参考人質疑において、言った、言わないの真相を明らかにすることは、まさに、政・官の癒着を“構造改革”するための第一歩です。眞紀子さんが言うように、野上・前事務次官が、鈴木宗男議員の名前を口に出したにもかかわらず、鈴木氏の名前を「言っていない」と嘘をついているとしたら、外務省は鈴木議員を庇っているとしか思えません。鈴木議員と外務省の関係、政治家と官僚の癒着の実態を明らかにすることこそ、これまでの利権の構造を改める“改革”に他ならないでしょう。
しかし小泉総理は、真相を徹底解明する前に、眞紀子さんと野上氏を更迭しました。外務大臣に就任して以来、外務省改革に取り組んできた眞紀子さんにしてみれば、今回の真相を明らかにすることこそ、改革の最大のチャンスです。しかし、その前に職を解かれてしまった。結果として、改革に消極的だった小泉総理は、改革に抵抗する勢力=抵抗勢力なのではないか、と眞紀子さんは言っているのです。
確かに今回の参考人質疑でも、真相究明をどこまで真剣にやろうとしたのか、首を傾げたくなります。外務大臣とともに更迭された野上事務次官、そして、「鈴木宗男議員から恫喝された」と記者会見で話したNGOの代表者は、参考人として呼ばれませんでした。
これまた意見の食い違う二人ですが、やはり、問題の当事者です。総理は参考人質疑の後の審議で、「言った、言わないではきりがない。本人に聞いてもらうしかない。」とうんざりした様子で答弁していましたが、そもそもこの問題にかかわった4人を全員集めないで、どういう”きり”をつけようと考えていたのでしょう。これでは、食い違いの溝が深まるばかりです。
眞紀子さんは、さらに、小泉総理が”抵抗勢力”である、と考える理由を挙げています・・・
去年八月に外務次官を新たに任命しようとした人事で、自分の意向を官邸(総理や、官房長官など総理周辺の人たち)が覆したこと。去年四月に大臣になって以来、最重要課題だった外交機密費問題の解明で、外務省から総理官邸にお金が上納されているという疑惑を追及し切れなかったのは、官邸の圧力があったと考えていること。
もちろん眞紀子さんは、自分自身の更迭人事に納得がいかないから、刺激的な総理批判をした、という面もあるでしょう。しかし、そうした感情を別にしても、真相究明に消極的な小泉さんの姿勢には、多くの国民が納得してないのではないでしょうか。
改革に本気であることを納得させたいのなら、小泉総理は残る二人の当事者も、同時に呼んで質疑するべきだったと私は思います。
そして、今回新たに浮上した疑惑の解明は、まさに、総理が改革に本気かどうかを示す格好の試金石です。新たな疑惑、とは、今回の参考人質疑の中で、外務省と鈴木宗男議員との関係をめぐって、外務省の人事への介入、そして北方四島の政府開発援助での、工事入札をめぐる働きかけなど、まさに改革が望まれている、官僚や地元業者との”癒着の構造”が指摘されたのです。
少なくとも質疑の中のやり取りでは、国民が聞いて疑惑が晴れるような事実は、示されていません。この疑惑解明を、この先進めるのかどうか、そして鈴木氏と外務省の関係にどのような手を打つのか。総理が国民の味方だというなら、いち早く方針を打ち出し、改革に本気であることを示すべきでしょう。いままさに国民は、総理が本気かどうかに注目しています。