2002-02-19 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
今週金曜日放送の朝まで生テレビは、3月危機と小泉政権をテーマに取り上げる予定です。番組を分かりやすく見るために、簡単な予備知識を整理しておきましょう。
新聞や雑誌・テレビで、いま頻りに取りざたされている「3月危機」とはどういうことでしょうか。すでに今の日本経済が危機的状況にあることは、先週までにも幾度かお話してきました。
銀行や信用金庫などの金融機関は、ただでさえ不良債権処理(返ってきそうにない貸付金を、損したものと見なして処理する)に利益のほとんどをつぎ込んで、中には赤字になっている金融機関もあるというのに、年明けの急激な株安で大打撃を受けています。
株が目減りした分を損失として計上しなければならず、資本が極端に少なくなっているのです。資本が少ないということは、たとえば巨額の債務を抱えた企業が倒産して、急激に不良債権が増えたり、取り付け(金融機関の信用がなくなって預金が急激に引き出されること)が起きたりすれば、倒産してしまうかもしれません。
しかしこの3月、苦しい状態にある金融機関をさらに打ちのめすような事が、二つひかえています。一つはペイオフ解禁、もう一つは決算です。これらをきっかけに、金融機関が信用を失い、経済活動がストップしてしまうかもしれない、これこそが3月危機として心配されていることなのです。
ペイオフ解禁とは、4月1日以降、金融機関が破綻した場合、預金が1千万円とその利息までしか保証されなくなるというルールの発効です。これをきっかけに、赤字決算をするなど経営に不安がある金融機関から、預金が大量に引き出されることが心配されています。
でも、私が調べた範囲では、この他にもさらに、危機を引き起こす可能性の高いことが、実はこのペイオフ解禁に隠されているようなのです。
4月1日から全額保護されなくなるのは、私たちの預金だけでなく、金融機関同士が資金をやりとりする場合もあてはまります。これまでの政府保証がなくなって、相手が破綻しても、貸したお金が全額戻ってこなくなるのです。
金融機関はお互いに決済に必要な大きな資金を、市場などを通じて頻繁にやりとりしているのですが、損しても保証されないとなれば、信用できない金融機関には、貸さなくなるでしょう。資本が少なくて倒産しそうだ、という噂が流れるところには貸さなくなり、結局そこは本当に資金が足りなくなって、噂通りに倒産してしまうかもしれません。
そしてもう一つの“決算”が、危機のきっかけになる理由は、金融庁の特別検査です。金融庁は、不良債権処理を進めるために特別検査を行い、去年12月の末までには個々の不良債権について、どの企業の債務がどのくらい危ないかの評価を定めてきました。
年明けからは、不良債権が巨額に上る企業を潰すか潰さないかについて、大手銀行と相談しているところだといいます。そして、3月の末に出る銀行の決算は、その結果を反映させることになっているのです。
つまり、政府の意向に従って大きな借金を抱えた企業いくつかが、3月には潰れ、その企業の不良債権を抱えている銀行は、3月の決算で巨額の損失を出さなくてはならない、ということになります。
赤字が大きすぎて債務超過(銀行の全部の資産を合わせても損が埋まらない状態)になったり、支払うはずのお金を払えなくなったりすれば、大手銀行といえども倒産してしまうかもしれません。
ペイオフ解禁や金融庁の調査がきっかけで、信頼の高い大手銀行が潰れたり、中小の金融機関が連鎖的に倒産するようなことになれば、金融市場全体の信用がぐらついて、日本の経済はまさに危機に陥ります。
さて、それを未然に防ぐためにはどんな手立てがあるのでしょうか、また、起きてしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。それらについての議論を、朝まで生テレビでじっくり見てください。