2002-02-05 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
そんな結末ってアリ!? アフガン復興支援会議のNGOに対する参加拒否問題で、小泉総理は、田中眞紀子外務大臣と野上事務次官を更迭し、鈴木宗男議員は議院運営委員長を辞任しました。
思いもよらない顛末に、私としては本当にがっかりしてしまった”三方一両損”。利害が絡み合う三者が等しく痛みを負うという、例の医療保険改革のときに出てきた言葉ですが、本当にそうだったのでしょうか。
野上事務次官は、外務省を去るにあたって職員に対し「みんなの仕事はやり易くなる」と言ったそうです。外務官僚にとって扱いにくい大臣が去れば、当然のことでしょう。ましてや、官邸機密費の問題を解明しようと言う人も、これでいなくなりますから、小泉総理の決断で一番いい思いをしたのは、実は、外務省の本体ではないでしょうか?
小泉総理は国会を正常化するために、三者を退場させたと言っています。でも、国会審議が元に戻って、これで一件落着、というのはおかしくないですか?
真相は何も明らかになっていません。「言った、言わない」は問題じゃない、なんていう人もいますが、国会で大臣が発言したことですから、嘘だったら大変です。それに、審議が紛糾する理由は、真相が明らかにならないからでしょう?
三者が全くばらばらのことを言っているのに、何が真相かを突き止めようとしないから、野党が噛み付くのです。野党だって、政府が真相究明のためのしっかりした枠組みを作り、情報を公開すれば、審議がスムーズに運ぶよう協力するのではないでしょうか。
結局、小泉総理は、真相を明らかにしたくなかったとしか見えないのです。そうでなければ、真相を明らかにさせまいとする圧力に、総理はすでにからめとられているのかも知れません。
だとしたら、小泉総理にはもうこれ以上、改革を期待できないのではないでしょうか。それは実は、大変な事態です。ただ、総理や官房長官は、外務官僚と敵対してトラブルばかり起こし、外交を停滞させてしまうような田中外相を、いいタイミングさえあれば切りたいと思っていたとも言われています。
真相を明らかにして、田中外相を更迭する理由がなくなるより、このタイミングを逃さないほうがいい、という判断が、どこかにあったのかもしれません。
でも、外務省と鈴木議員の関係については、総理自身が答えています。2月1日の答弁で小泉総理は、「外務省は、どうも鈴木議員を気にしすぎる傾向がある。厳しく言いましたから、今後外務省に対する鈴木議員の影響力は少なくなるでしょう」と語りました。
つまり、裏を返せば、これまでは鈴木議員が大きな影響力を持っていたと、首相自身が認めていることになります。ならばなぜ、外務省改革を田中眞紀子さんに託した小泉総理自身が、真相解明の作業をストップさせてしまうのか。この出来事で問われるべきは、外務省の体質改善と、族議員との関係ではないでしょうか。
まさに、これらのことを明確にすることこそ、今まで国民の圧倒的な支持を得ていた小泉内閣に期待されていたことだというのに、「言った、言わない」のケンカに矮小化して三方一両損でケリをつけたのでは、総理は改革から逃げていると国民に思われても仕方ないでしょう。
「一内閣一閣僚」という公約を破ってまでして、国民の人気が高い田中外相をクビにし、また先日は、負債が大きすぎることを理由にダイエーを救済し、道路公団の高速道路の工事発注見送りを一ヶ月で撤回するなど、このところの小泉総理は、いわゆる抵抗勢力に、どうも押され気味に見えます。
これで支持率の低下に付け込んで、抵抗勢力が巻き返してくると、総理の改革は夢と終わってしまうかもしれません。実際、田中外相更迭によって小泉改革が後退する、とよんだ外国人投資家が、日本売り(日本の株や円や債権を売ること)を始め、危機的な状況にあった日本の経済が、崩壊の現実味をおびてきました。
最悪の結末を迎えないためには、国民の指示を得る政策、すなわち構造改革を、このまま押し進めなければなりません。それには、抵抗勢力を黙らせるためにも、今こそ国民の熱い支持が必要なのです。田中外相を更迭して、これからは、内閣の人気を一人で支える小泉総理、いよいよ正念場を迎えています。