2002-01-29 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
先週の金曜日、田中真紀子外務大臣が、テレビカメラの前で泣きました。みなさんも、ニュースやワイドショーなどで、その映像を目にしたことでしょう。現役の大臣が、国会で悔し涙を流すなんて、前代未聞とも言える出来事です。
週が明けてこの問題は、国会の委員会審議を何度も中断させる騒ぎになりました。もちろん、大臣が泣いたことではなく、“誰が嘘をついているのか”をめぐって、です。ことの発端は、20日から22日まで東京で開催されたアフガン復興支援会議の、NGO(非政府組織)の会議で、日本の2つの有力なNGOが、外務省から参加を拒否された、という出来事でした。
この件をめぐって田中真紀子外務大臣は、その経緯に鈴木宗男議員が関与していることを、外務省の野上(のがみ)事務次官および重家(しげいえ)中東アフリカ局長から聞いた、と衆議院予算委員会で答弁しました。
ところが当の鈴木宗男議員は、参加・不参加に関する具体的な言及については否定。さらに野上事務次官は「参加問題で(鈴木議員)と接触を持ったことは一切ない」「私から(大臣に)報告したという事実もない」と会見などで語りました。
言った、言わないのケンカを受けて、事情聴取に及んだ自民党の国会対策委員会は、官僚の作った議事録を根拠に、発言を訂正するよう真紀子大臣に求めます。それを受けて真紀子大臣は、「役所の言うことは正しくて、国会議員の言うことは正しくないんですか」と悔し涙を流したのです。
野党・民主党は週明け、コトの真相が明らかにならない限り、補正予算の採決に応じない、として、野上事務次官や重家局長を国会に呼びました。
重家局長は初め、鈴木議員の関与を否定していましたが、追求を受けるうち、(真紀子)大臣の発言を認めるような、あいまいな答弁を繰り返します。ところが後から野上事務次官が登場すると、一転、二人して(真紀子)大臣の答弁の内容を否定したのです。
果たして誰が本当のことを言っているのでしょうか。今までのところ、国民にとって最も信じられそうなのは、参加拒否された当事者であるNGOの代表が、年末と年明けと2回にわたって、「態度が気に食わない」という理由で鈴木宗男議員から怒鳴られた、と会見で語っていることです。
この発言にしても、即、“鈴木議員からの圧力があった”という証明にはなりません。真実を語っているのは誰か、何が本当なのか、とても気になります。でも、日本の外交にとってまず問題になるのは、圧力に負けたにせよ、独自の判断にせよ、今回の会議から有力NGO団体をはずすという判断を、外務省が実行したことそのものではないでしょうか。
というのも、アフガンでの人道援助は、アメリカの空爆以前から、NGOが現地でのきめ細かな活動に重要な役割を果たしてきました。空爆中でさえ、アフガニスタン国内に拠点を置き、現在の暫定政権の有力者とも当時からパイプがあったのに対し、日本の外務省は、アメリカの戦争が続いている間、拠点をパキスタンに置いていました。
そして、アフガンの復興は、日本が久々にイニシアチブを握ろうとしている国際的な取り組みです。その成功のためには、現地情報に詳しいNGOの協力がなんといっても不可欠でしょう。しかし外務省は、政府への批判的態度を理由に参加拒否したというのですから、あきれます。これでは、国家としての利益より、自分たちの利益やプライドを取った、と見なされても仕方ありません。
政府とNGOとの連係は、アメリカやヨーロッパ諸国では、いまや当然の政策として考慮されていると言われています。外務省の判断は、NGOに対する認識不足とも受け取られかねません。
傷ついたNGOとの信頼を回復するために、外務省の縄張り意識や過剰なプライドを改めること、あるいは・・・もし圧力に負けたのだとしたら、そうした癒着を断ち切ること。アフガン復興に向けて、今後さらに重要になってくるNGOとの連係を考えると、田中真紀子さんが外務大臣に就任して以来言われ続けている“外務省改革”が、ますます必要なのかもしれません。
それにしても、国会をストップさせた“嘘つきは誰だ!?”問題は、どのように決着がつくのでしょうか。事態の展開を見て、また来週、お話したいと思います。