2002-01-22 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
私事ですが、1月19日で31歳になりました。31歳なんて! 高校生の頃には想像もつきませんでしたが、今こうしてなってみると、他人の気持ちがわかってくるとか、社会の歴史が見えてくるとかいう意味で、やっと大人になってきたように思います。
31歳でやっと大人か、とため息をつかないで。いろいろな経験をすればするほど、人生の先輩達の偉さがわかって、自分が大人だと思える瞬間が遠のいていくものなんです。ところが一方では、大人だと思っていた人達のちっぽけなところも見えてきます。そんな大人像が、自分の中で一つに収まってくるのが、30歳くらいかな、というのが私の今の実感です。
ところでその1月19日、新聞に大きく、ダイエーの再建計画が報じられましたが、みなさんは気付いていたでしょうか。
実は、もしダイエーが倒産したら、日本は金融危機になっていたかも知れないのです! 一企業の倒産が日本経済を危機に陥れる可能性もあったわけで、だからこそダイエーが潰れるのか、再建するのか、再建するならどのような手段を使うのか、注目されていました。
全国に300店舗以上を持ち、グループ約170社で10万人前後の従業員を抱える巨大な流通企業ダイエーは、主要な取引銀行に対して、なんと2兆3000億円もの負債がありました。昨年度は借金の利子だけで約528億。昨年の営業利益は500億弱ですから、これでは、いくら儲かっても借金の返済で終わってしまいます。
こんなにもダイエーの負債が膨らんでしまったのは、バブル景気の頃、値上がりする一方だった土地を担保にして、スーパー以外の事業に、手当たり次第といってもいいくらい次々と、手を出していったからです。
たとえば外食産業(レストランのフォルクスや神戸らんぷ亭)、ホテル事業(新浦安オリエンタルホテル)、プロ野球球団経営(福岡ダイエーホークス)など、ダイエーの事業だとは知らなくても、聞いたことはあるのではないでしょうか。これらの事業が、景気の悪化とともに採算が合わなくなり、負債が大きくなっていきました。’94年には全国展開を狙って経営不振に陥ったスーパーを吸収合併したため、負債総額が1兆円を超え、これが後に債務超過へと転じる引き金になったとも言われています。
ダイエー倒産に対する不安が広がったのが、昨年秋頃。同じ流通業のマイカルが倒産したことで、ダイエーも株が急落し、商品を納入する業者が続々と取引の条件を厳しくしたのです。12月には株価が一時69円をつけ、いよいよ危機的状況になってきました。
もしダイエーが倒産したら、従業員10万人が職を失うだけでなく、取引をしている多くの企業が連鎖倒産し、雇用不安が広がるでしょう。そればかりか、ダイエーの主要取引銀行は、ダイエーの不良債権を“要注意先債権”に分類しているため、最大でも債務の2割分しか引当金(借金が戻って来なかった時の為に用意しているお金)を用意していません。
もし倒産すれば、銀行は巨額の赤字を出すことになります。資本が減って、銀行自身の株価も下がり、経営の危機に陥るでしょう。主要行はいずれも、UFJや富士、三井住友など日本を代表する銀行です。万が一にも潰れたり、国有化されたりすれば、日本経済の危機が一気に広がります。
そうならないために、18日に発表された再建計画(新3カ年計画)は、銀行ばかりでなく国さえも、法律・税金の面からバックアップをして、なんとか、ダイエーの倒産と、その先にある金融システムの危機をくい止めようとしていることがうかがえます。
昨年12月、中堅ゼネコンの青木建設が潰れた時は「構造改革の表れ」だと言っていた小泉総理が、年が明けてからは「金融危機を起こさないためのあらゆる手段を講じる」と表明しています。
これこそ、日本政府として、ダイエーを倒産させるわけにいかない、というメッセージではないでしょうか。日本の金融システムに大打撃を与えかねない“爆弾”ダイエーは、不良債権の額が大きすぎて“つぶすにつぶせない”企業だったのです。
一方でつぶせる大きさ(不良債権額はダイエーの半分)だったマイカルが倒産し、大きすぎるダイエーは救済されているという矛盾。そして、ダイエーの後には、同じように大きすぎる債務を抱えた建設会社(ゼネコン)の処理が、十数社もひかえています。
今回の処理方法で危機が回避できたのか、それとも問題が単に先送りされただけだったのか、今後見えてくる、その答えに注目です。