2001-12-25 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
Merry Christmas! 早くもあと6日でお正月です。私はクリスマスもお正月も大好き。いつもはケンカばかりしている母や妹とも、家族の団欒イベントが多いこの時期だけは、仲良く過ごせるからです。特に理由付けはなくても、ウキウキした気分になるってことは、ケンカをしなくて済む良い方法かも知れませんね!
先週から引き続き、アフガニスタンの話をしましょう。22日に、暫定行政機構の発足式典がカブールで行われました。ソ連のアフガン侵攻以来、実に22年も続いてきた戦乱状態がようやく終結しそうです。しかし残念ながら、これで完全に平和になる、と言い切れるわけではありません。アフガニスタンの過去を振り返ると、政権内部の権力闘争が、再び内戦を引き起こす可能性もないとはいえないからです。
1989年にソ連がアフガニスタンから撤退した後、ソ連に対するジハード(聖戦)を戦ったムジャヒディン(聖戦士)のリーダーたちは、それぞれの勢力を率いて連立政権を樹立しました。ちょうど今回、アルカイダとタリバンを敵として戦った北部同盟やパシュトゥン人勢力が、暫定行政機構を発足させたのと同じ様な形です。
このとき大統領になったのが、今回政権の座を離れた北部同盟のリーダー、ラバニ氏です。ラバニ氏と同じくタジク人で、今年9月にタリバンに暗殺されるまで北部同盟のリーダーだった、“アフガンの英雄”マスード氏と、彼ら2人が当時の政権の軸だったのですが、これに反発するパシュトゥン人の有力者、ヘクマティアル氏が政権を離脱し、イスラム党を結成。以降、激しく対立するようになります。
ラバニ氏に対立する勢力は、他にも今回マザリシャリフという要衝を陥落させた、ドスタム将軍(ウズベク人)派などがありました。彼ら“反ラバニ派”は、政府とは別に代表組織を結成し、ラバニ派率いる政府に対し武力闘争を始めました。
しかしこの争いは、“ラバニ派”対“反ラバニ派”の対立として、簡単にわりきってしまえるようなものではありませんでした。タジク人、パシュトゥン人、ウズベク人という民族の対立、イスラム教の宗派の対立などが複雑に絡み合っていて、それぞれの派閥の内部ですら、互いの勢力を争っていたのです。
結局のところ、有力者達は私利私欲に走り、自分たちの影響力をいかに強めるか、ということしか考えていませんでした。ですから周辺諸国にとって、この内戦を己が私利私欲のために利用するのは、たやすいことだったのです。
パキスタンやサウジアラビアは、アフガニスタンでの自国の影響力を強めようと、それぞれ別の勢力を支援しました。国民の一割がパシュトゥン人というパキスタンは、ヘクマティアル氏のパシュトゥン人勢力を、イスラム教シーア派が多いイランは、同じシーア派のハザラ人勢力を、タジキスタンはラバニ氏らタジク人勢力を、ウズベキスタンはウズベク人のドスタム将軍派を…というように。おかげで、アフガニスタンの内戦はより根深いものとなり、長引いてしまいました。
今回の暫定政権を構成する4派、パシュトゥン人のハミド・カルザイ議長、タジク人系ラバニ前大統領派、ウズベク人系ドスタム将軍派、ハザラ人系ハリリ派は、かつて権力闘争を繰り広げたムジャヒディンの、それぞれの勢力の流れを、ほぼ引き継いでいると言えるでしょう。過去に対立していた派閥が、再び、寄せ集めの政権を構成しているのです。
しかも、一番人口が多いパシュトゥン人は一枚岩ではなく、そのすべての勢力をハミド・カルザイ議長が代表しているわけではありません。
このように不安定な政権の構造に加えて、アフガニスタンへの影響力を強めようとする周辺国の思惑が、早くも見え隠れしています。パキスタン、イラン、インドなど、かつて内戦で各派を支援した国が、新政権への支援を早々に表明しています。
新政権の有力者たちが、権力闘争に走らないようお互いに努力すれば、周辺国の介入を防ぐことにもなります。さらにアメリカやイギリスなどの大国、そして国連が、アフガニスタン政府や国民の意志を尊重しつつ、政権内の対立する勢力を和合させるよう、働きかけてゆく必要があるでしょう。
かつての反省をふまえるなら、日本を含め、直接の利害関係を持たない国々が、新しいアフガニスタンに注目し続けることが、大切ではないでしょうか。
さて、次回は新年に突入しています。来年、この問題は一体どうなっているのでしょうか?
受験を控える皆さんはいよいよ本番ですね。クリスマスもお正月もないでしょうが、どうか身体に気をつけてがんばって下さい。そして、今年1年ありがとうございました。皆さん、良いお年を!