2001-12-11 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
アメリカの空爆が始まってから、ちょうど2ヶ月がたった12月6日。タリバンがついに本拠地カンダハルを明け渡しました。この撤退によって、1996年以降国土の9割を支配してきたタリバンが、政治勢力としては消滅し、アフガニスタンは国家の再建に向けて、動き出しました。
しかし、これで“アメリカの戦争”が終わったわけではありません。アメリカが最終目的としているのは、オサマ・ビンラディンの身柄確保と、アルカイダの消滅だからです。
オサマ・ビンラディンの行方はいまだにわからないようです。またアルカイダの兵士数千人が、いまだに東部ジャララバードに近いトラボラ地区の山中にたてこもっていると見られていることから、トラボラ地区ではアメリカの空爆が続けられています。
一方で、タリバン後のアフガニスタンをめぐって、国連と各民族や政治勢力などの代表者が集まり、ドイツのボンで会議が行われました。おそくとも2年半以内に選挙を行って、民主的な政権を誕生させることとし、そのためのスケジュールを決め、民主政権発足までは、“暫定行政機構”が内閣の役割を果たすことになったようです。
20年以上、戦乱で揺れ続けたアフガニスタンにとって、この協定の調印は、平和への歴史的な一歩です。アフガニスタン国民だけでなく、世界中がこの一歩に大きな期待を寄せています。
しかしながら、平和な国づくりへの道程は前途多難です。代表者会議に参加した各勢力は、自分たちの影響力を拡大すべく、行政機構内の重要ポストを奪い合い、それに納得が出来ない一部勢力は、早くも離反の動きを見せているのです。
そもそもアフガニスタンは、民族構成が複雑で、タリバン支配以前は、いくつもの勢力が覇権を争う内戦状態にありました。今回、代表者として協定に調印した4つの勢力は、その当時の対立の構図を、ほぼそのまま引き継いでいます。タリバンという“重石”=共通の敵がなくなったことで、互いの対立が再び鮮明になったと言えるでしょう。
20年以上続いた戦乱にようやく終止符が打たれようとしている今、この大事な時期に、各派が権力を争っている様子には強い悲しみを覚えます。アフガニスタンの国民は長い間、内乱と飢餓によって悲惨な生活を強いられ、国土は荒廃しきっているにも関わらず、己の利益に固執する、権力者のなんと愚かしいことか。権力を目の前にすると、人間は自分のことしか考えられなくなるものでしょうか。
しかも残念なことに、アフガニスタンは過去、今と同じ様な状態から内戦に突入した歴史を持っています。「歴史は繰り返す」といいますが、今度ばかりは同じことが起きないよう、世界がアフガニスタンから目を逸らさず、アフガニスタン“国民”の望む手助けをするべきではないでしょうか。
ただし、アメリカや周辺諸国は、自国の利益のため、さんざんアフガニスタンに介入して内戦状態を長引かせた上、自国の思惑通りに動かないタリバン政権の支配が始まると、アフガニスタンから手を引いた、という過去があります。そうした各国の思惑が、今のところ中立性を保っている国連のリーダーシップの隙を突いて、再び介入してくる恐れがないとも言い切れません。世界が注目を続けることが必要だと思います。
来週は30年ほど時間を遡って、アフガニスタンの歴史を見てみましょう。