2001-11-27 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
前回、欧米列強の支配(第二次世界大戦まで)に、イスラム社会が怒りを募らせたことを話しました。しかしその後、世界の覇権を握った2つの超大国も、決してアラブの人々の意志を尊重したわけではありませんでした。
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが行ったホロコースト(大虐殺)により、ユダヤ人のあいだには、国家建設への思いがいっそう強くなりました。
またヨーロッパ諸国やアメリカは、歴史的にユダヤ人を差別してきただけでなく、ホロコーストの際、ユダヤ人に救いの手を差し伸べなかったという罪悪感もあって、シオニスト(パレスチナにユダヤ人の国を作ろうと主張する人たち)の働きかけを受ける形で、パレスチナの土地をユダヤ人とアラブ人の国家に分割する事を、第二次世界大戦後に国連で決議しました。
この決議は、パレスチナ全土のうち肥沃な土地を多く含む57%を、地域の人口の約30%にあたるユダヤ人の国とするもので、公平なものとはいえませんでした。
ユダヤ人達は当然のことながらこの決議を受け入れ、翌年には「イスラエル独立宣言」を行います。これに反発したアラブ諸国が、パレスチナに軍隊を送り、そこから長い紛争の歴史が始まるのです。
同時にアラブ諸国は、石油を巡る大国の争いの舞台となりました。とりわけパレスチナは、中東から地中海へのパイプラインの出口にあたり、且つ地中海からインド洋に抜けるスエズ運河に隣接する要所でもあり、大国にとっては自国の影響下に置いておきたい地域です。
帝国主義は、米ソの冷戦に形を変え、相変わらずアラブを翻弄しました。パレスチナでは、ユダヤ人の入植と内乱によって多くの難民が生まれ、アラブ諸国とその人民は、アメリカやソ連の思惑に揺さぶられながら、パレスチナを巡って様々な戦いに巻き込まれ、また自ら戦いに身を投じていきました。
アメリカは、独立宣言の翌日、イスラエル国家を認め、中東での紛争とテロが激しくなる中でも、一貫してイスラエルを支援し続けました。国際政治の場でイスラエルの立場を擁護し、軍事的・経済的な支援も行いました。
その一方で、アラブ諸国に対しては、テロなどを理由に厳しい軍事・経済制裁をおこなったのです。このアメリカの姿勢に、アラブの人々の怒りは膨らみ、テロと報復の連鎖が拡大して行きました。
しかし、なぜアメリカはアラブの怒りをかってまで、イスラエルを支援するのでしょうか。もちろん冷戦時代は、ソ連と対抗するためでしたが、それ以外の理由の一つに、アメリカ社会におけるユダヤ人の存在がある、とみられています。
数は決して多くないものの、ユダヤ人達は経済やマスメディア等の分野に大きな影響力を持ち、尚且つよく組織化されているため、アメリカ東部の重要な州では、選挙の行方を左右します。この事からアメリカの政治家達は、ユダヤ人達の意向を無視できないのだと言われています。
パレスチナの問題が画期的な和平に動き出すのは、1990年代に入ってからのこと。来週も、この続きです。