2001-11-06 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
アメリカのアフガニスタンに対する空爆が始まって、4週間がたちました。地上では特殊部隊による作戦も展開されていますが、アメリカが捕らえようとしているオサマ・ビンラディン氏の居所は、いまだに明らかになっていません。そればかりか、アフガニスタン国内で人道支援にあたっているNGO(非政府組織)の施設がアメリカ軍に誤爆されたり、アメリカの支援を受けてタリバンの分裂工作にあたっていたとみられる、北部同盟の指揮官が、タリバンに殺害されるなど、アメリカの“失態”が次々と報道されています。
そんな中で、アメリカの空爆がもたらす問題も、露呈し始めました。空爆の以前から、アフガニスタンでは、国連やNGOが、内戦や飢餓に苦しめられてきた多くの難民に対し、人道支援を行っていましたが、空爆によって、それらの支援が行き渡らなくなってしまったのです。しかも、アフガニスタンは間もなく冬。このまま空爆が続けば、100万人の餓死者が出ると言われています。国連のアナン事務総長も「空爆を停止するべきだ」と発言しています。
アメリカ軍が投下する食料で、飢えをしのいでいる人々の姿や、誤爆によって傷ついた、タリバンとは関係のない市民の映像が、テレビを通して世界中に流れるにつれ、国際社会に、またアメリカ国内に、成果の見えない軍事行動への批判の声が高くなっています。
さらに、“反テロリズム”で一つにまとまっていた国際社会を、揺さぶるような問題が、目前に迫っています。11月半ばに始まる、イスラム教の“ラマダン(断食月)“です。
イスラム教の暦で一ヶ月間、夜明けから日没まで一切の食べ物を口にしない“ラマダン”は、イスラム教徒にとって、とても神聖な期間。宗教の教えに立ち返り、自己を見直す期間で、キリスト教で言えばクリスマスのように、人々の暮らしにとって大きな位置を占めるのです(ただし、パーティーをしてにぎやかに祝うわけではなく、静かに過ごします)。
もし、“ラマダン”を無視して、アメリカがアフガニスタンへの攻撃を続ければ、イスラム諸国の反感を買うことになるでしょう。国連の武力行使決議があるわけではなく、テロとの戦いだけを理由に、国際世論を味方につけようとしているアメリカにとって、イスラム諸国を敵に回すのは避けたいところ。しかし、一ヶ月近く攻撃をストップすれば、タリバン側が体制を立て直すことも可能になります。
今のところ、アメリカは“ラマダン”中も攻撃を続けるとしています。しかし、オサマ・ビンラディン氏を捕らえるあてのないまま攻撃を長く続ければ、国際世論がアメリカから離れていくことは確実です。
そればかりか、新たなテロが起きる可能性も高くなってきます。戦争が長期化すれば、それだけ費用も膨らんで、ただでさえ下降気味のアメリカ経済に、重くのし掛かってくるでしょう。世界経済の中枢にあるアメリカ経済が元気を失うことは、世界経済にとっても深刻な問題です。
こうしたことを考えれば、早く戦争を終わらせたほうが、アメリカ自身にとっても、世界にとっても望ましいのですが、一方で、テロリストに対してダメージを与えた、という何らかの成果を見せなければ、アメリカ国民が納得しないでしょう。
今回の戦争は、まさに出口が見えない状態になってきています。いつ、どのように戦争を終わらせるかは、アメリカにとっても、戦争後のアフガニスタンにとっても、そして国際社会にとっても、長く大きな影響を残すことになります。
日本にとっても他人事ではありません。テロ特措法の成立によって、時限立法ではあるものの、いまや“戦闘地域”でなければいつでも、どこででも、アメリカの後方支援が出来るようになったわけです。しかし、出口の見えない戦争に何処まで付き合うのか、日本国内の議論は、まだ十分に尽くされていないようです。
そもそも、アメリカの“戦争”という手段は、テロの根絶につながるのでしょうか。そして、どうすれば、この戦争がおわるのでしょうか。次回は、テロが起きる背景を考えてみましょう。