2001-10-09 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
ついに、アメリカによる報復攻撃が始まってしまいました。イギリスも参加しての、巡航ミサイルや爆撃機によるタリバン拠点などへの攻撃に対し、アフガニスタン当局は、「我々は最後の血の一滴まで戦う」と声明しています。
一方、今回の軍事行動に加わらなかったNATO諸国が、アメリカへの軍事支援を次々と表明しています。また、日本の小泉総理は、今回の報復攻撃を「強く支持する」と発表しました。
いったいどこまでアメリカが攻撃を続けるのか、この緊迫した事態はいつ終わるのか、先は全く読めません。
先月11日に起きたテロ事件を、戦争とみるか、犯罪とみるか。これはおそらく、みなさんが思っている以上に大切な問題です。アメリカのとる軍事行動の正当性や、日本の自衛隊派遣の根拠にも関わってくるからです。
ブッシュ大統領は、事件当日「テロリストによる攻撃」と言っていましたが、翌日「これは新しい戦争だ」と認識を改めました。
戦争は、「国(または地域)と国(または地域)が武力で争うこと」と、国際法で規定されています。一方テロは、人物や組織の行為で、国の行為ではありません。つまりこれまでの国際法にのっとって認識すれば、テロ行為は戦争ではないのです。
特定の人物や組織が行った犯罪に対しては、警察などの捜査機関が捜査し、証拠があがって犯人が特定されれば、裁判によってその罪が問われ、制裁措置が決まります。テロを犯罪とみなすのならば、こうした司法手続きで対処するのが筋でしょう。
しかしながら、アメリカは今回の事態を“自衛のための戦争”と認識しています。旅客機もろともアメリカの中枢に突っ込み、数時間で6000人近い命が奪われるという、過去に例のない被害の大きさなどから、アメリカはこれを国に対する武力攻撃と認識したのです。
そして、自国の領土(しかも、アメリカ本土)が武力攻撃を受けたことに対して、自衛のため武力で対抗する措置を取ることを決めました。このアメリカの行動に対して、NATO(北大西洋条約機構=アメリカ・カナダ・ヨーロッパ諸国など19カ国が加盟する軍事同盟)の加盟国は、共同軍事行動をとることを決めています。
アメリカとNATOの軍事行動は、それぞれ意味合いが違います。アメリカの軍事行動は、「個別的自衛権の行使」といいます。「個別的自衛権」というのは、独立国が、自国に攻撃が加えられた場合に、国土を守るために武力を行使する権利です。
これに対して、NATOの行動は、「集団的自衛権の行使」です。「集団的自衛権」とは、同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなし、共同して防衛にあたる権利をいいます。NATOが集団的自衛権を行使するということは、アメリカの言うように、今回のテロ事件を、アメリカに対する武力攻撃とみなしたことになります。
では、日本はどうでしょうか。小泉総理は、テロ事件の8日後に、「自衛隊派遣のための措置をとる」と発表し、ブッシュ大統領との会談では、これを事実上の対米公約としました。日本もまた、テロ事件を武力攻撃とみなし、集団的自衛権を行使するということでしょうか。
ところが日本は、「集団的自衛権の行使」が出来ません。日本政府はこれまで、憲法9条の解釈上、行使できないという立場をとっているのです。自衛隊は「個別的自衛権」つまり、自国に直接の攻撃があったときだけ、その武力を行使できます。
となると、集団的自衛権は行使できない、つまり武力ではアメリカと共に戦えない日本が、自衛隊を派遣することの意味付けは難しくなってきます。NATOは集団的自衛権の行使として、軍隊を派遣します。アメリカは、アメリカ自身の戦争を戦うわけです。
日本がもし、アメリカ自身の(個別的自衛権の行使としての)戦争に手を貸すということになると、集団的自衛権の行使にふれる可能性もないとは言い切れません。たとえそのつもりがなくても、万が一、現地に派遣された自衛隊が武力行使せざるを得ない状況になった場合、アメリカの戦争に武力で手を貸したことになってしまいます。
自衛隊が派遣されるのは、いったいどういう状況の場所なのでしょうか。来週さらにこの問題について考えます。