2001-08-21 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
日本の昭和の戦争は、国を守るための自衛戦争だったのか、それとも間違った侵略戦争だったのか。このとらえ方のちがいが、日本が抱える多くの難題、なかでも解決にはまだまだ時間がかかる問題の、根元のひとつとなっていることを前回話しました。“靖国神社参拝”“歴史教科書”“日米安全保障”“憲法”“自衛隊”“教育”どれも、“先の大戦(満州事変・日中戦争から太平洋戦争まで)”をどう考えるかによって、意見が分かれる問題です。これらの問題を紐解くには、日本がやった戦争をどうとらえるかという点に、一度は立ち戻らなければなりません。
あの戦争は、国を守るための正当防衛だった、というとらえ方をする人たちは、当時の世界情勢に目を向けています。日本が明治政府になったばかりの頃、アメリカ、イギリス、ロシア、フランスなどの欧米列強諸国は、中国を植民地にしようとしていました。(それを目の当たりにした日本は、自分たちの国も植民地になることを恐れて、富国強兵をすすめ、欧米列強に肩を並べようとしたのです。)当時の世界は、植民地になるか、植民地を持つか、大ざっぱに言ってそのどちらかに分けられていました。欧米列強諸国は当然のように、武力でアジアやアフリカの国々を植民地にしていて、まさに「喰うか喰われるか」の状況だったのです。日本は自国を衛るため、やむを得ず朝鮮半島、中国大陸へ出兵し、国際社会の反感を買って経済封鎖を受け、資源を求めてやむを得ず南方へ進出した、だから、あの戦争は植民地にならないための自衛の戦争だった。これが一方の見方です。
しかし、やむを得ない戦争だったとしても、他国の領土を武力で自分の土地にすること(とりわけ中国・韓国において)は侵略行為だ、だからあれは間違った戦争だ、というのが対立するもう一つの見方です。今の世の中を生きている私達からしたら、当然、侵略はいけないことだけど、その当時の政治的な常識を考えると、仕方がなかったのかも知れません。だとしても、現実にひどい被害を受けた国があるのだから、悪いことをしたんだ、とも言えそうです。
この見方のどちらが正しいのか、決着をつけるのは難しいことです。当時の状況について、戦争を経験した人たちの証言がもっと必要だし、どの時点の価値観に立つのかを決めなくてはいけません。でも、今という時点にたって当時の価値観を“正しい”とか“正しくない”とか判断することなんて、出来るんでしょうか。
いずれにしても、こうして意見が分かれることになってしまったのは、戦争が終わってから今まで、あの戦争についてのとらえ方を、私たち日本人が、自分たちの手で選び直さなかったところに、原因の一つがありそうです。
“選び直す”というのは、どういうことか、次回お話しします。