2001-07-24 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
いよいよ今週末は参議院選挙です。「いよいよ」といったのは、前々回にもお話した“小泉ブーム”の元をたどれば、自民党がこの参議院選挙を乗り切るために、森・前総理大臣に代わる新しい党の顔を、4月の総裁選で選んだことから始まっているからです。
去年の春、小渕元総理が倒れたとき、自民党の実力者5人だけで後継者を森さんに決めてしまったことから、総理の正当性を問う声があがりました。さらには、森・前総理の“神の国発言”を始めとする失言や景気の悪化などで、内閣支持率は10%を切り、自民党への支持も急落しました。…これでは夏の参議院選挙で、一気に議席数を減らしてしまう! その危機感が、春の総裁選、そして小泉総理誕生のきっかけになったのです。裏を返せば、この選挙さえ乗り切れば、むしろ自民党に都合の悪い改革まで進めようとする小泉内閣はご用済み、というのが本音かもしれません。
自民党の支持率は7月始めの時点で30%台の半ばを越えています。森前内閣の末期、今年2月の時点では、わずかに20%をきる程度でした。総理が変わっただけで、自民党全体が変わったわけではないのに、小泉総理の人気に引っ張られて自民党の支持率が倍近くに増えていることがわかります。一方で、小泉内閣の支持率は80%前後ですから、小泉さんは支持するが、自民党は支持しない、という人達が、小泉支持者の半分以上いることがわかります。「小泉さんは応援したいが、改革を阻む勢力が強い自民党は応援したくない」———こうした矛盾を抱えた有権者が、計算すれば全体の4割にのぼり、どの政党の支持者よりも多くなっています。これが、今までにない、この選挙の特異な点です。ジレンマに悩む有権者がどういう投票行動をとるかは、今回の選挙ばかりでなく、今後の政局を占うカギともいえるでしょう。
今回の参議院選挙は、定数が252人から10人削減され(選挙区で6人、比例区で4人)、方式が変わりました。これが、選挙結果にどのように影響を与えるか注目されています。参議院議員の任期は6年で、3年に一度、定員242人のうち半数が改選されます。このうち“比例代表選挙”では、これまで、各政党が立候補する人に順位をつけた名簿があり(拘束名簿式)、政党の得票数に比例して(ドント方式で)各党に当選議席が配分され、名簿の上から順に当選者が決まっていました。
今回からは、名簿に順位がなくなり(非拘束名簿式)、投票する人は政党名だけでなく、名簿に載っている個人の名前を書くことも出来るようになりました。
そして、一番多く票を取った人から、政党の中での当選順位が決まります。ただし! 全ての政党を見渡して、得票の多い人から順に、ということではありません。
当選させたい人に投票できる、ということは有権者にとって満足度が高いはずです。勝手に政党が決めた人よりも、自分が望む人にこそ、政治家になって欲しいでしょう? ところが、もしテレビなどで顔や名前が有名な立候補者をたてて、たくさんの票を集め、党の議席を増やしたとしたら?
投票した人は立候補している個人を応援したつもりでも、実際には党を応援したことになります。まるで党が有名人の威(この場合知名度)を借りるようなもの。実際のところ今回の選挙では、“タレント候補”といわれる、テレビなどでの有名・著名人が立候補しているケースが、与党・野党を問わず見られます。もちろん、行政や政治の場で経験がなくとも、30歳になった時点で、すべての国民に参議院選挙の候補者になる資格(被選挙権)がありますから、有名・著名人であることだけで批判するのは、的外れでしょう。しかし、その人たちが集めた票を政党の得票とするのは、有権者の意思を反映することになるでしょうか。
国会議員にとって、選挙はいちばんやっかいもの。お金も体力も消耗し、落ちたら“ただの人”です。そして、選挙制度は国会で決められています。自分たちの選ばれ方を、自分たちで決めるとしたら、なるべく有利なルールにしたい、と思うのは当然のこと。その時々の選挙制度改革が、何らかの政治的影響を受けていると考えるのは妥当でしょう。
さて今回の変更がどんな結果をもたらしたのか、選挙後じっくり見てみましょう。