2001-05-22 号
丸川 珠代 (テレビ朝日アナウンサー)
小泉内閣の人気を支える田中真紀子外務大臣は、いまはもう亡くなってしまった田中角栄元総理大臣の長女です。みんなにとってはすでに歴史上の人物だと思うけど、お父さんお母さんの世代にとっては、まだ生々しい記憶の残る政治家です。教科書で、中国との国交を回復した人ってことは習ったよね? さらに! 田中角栄さんが唱えた「列島改造論」の考え方が、後の日本の開発に大きな影響を与えたと言われています。
それまで中央のことが中心だった政策を地方に向けて、公共事業(国の予算で行う事業;道や橋・ダムなど建設事業が中心)を行ったり、補助金を地方に割り振ったりするルートが、角栄さんの時代に確立されていきました。ちょうど日本は高度経済成長期で、どんどん豊かになっていたこともあり、日本の国土は隅々まで開発されてゆきました。
その当時はそれでよかったんですが、いまの日本は借金が山のようにあり、どこにでもお金を使える状況にありません。しかし、中央から地方へのお金の流れの中で、利益や利権を手にしている人達が、それを離そうとしないので、お金を有効に使うための見直しが出来ないのです。中央が税金を集めて、地方に補助金として割り振る、このやり方は、中央の官僚が予算や計画を作るために、必ずしも地方の実情にあった事業が行われるとは限りません。こうした構造を改めるために、「地方分権」つまり地方が税金を集めて、自分たちで事業を考えてお金を使う、ということが、言われているのです。
もう一つ、田中角栄さんは総理大臣在任中に、政治家と産業界との癒着を象徴する事件、「ロッキード事件」で逮捕されました。これは、ロッキード社というアメリカの会社が、日本の航空会社に飛行機を売り込むために、日本の商社を通じて、田中角栄さん他、政府の偉い人たちに賄賂を送って便宜を図ってもらおうとした事件です。
この時代の反省にたって、いまは政治資金規制法など政治家に流れ込むお金を厳しくチェックするようになりましたが、当時、産業界は自分たちが潤うために政治家にお金を渡し、政治家は選挙で確実な票を手に入れるため、彼らに便宜を図るということが、堂々とまかり通っていたのです。そんな政治家と産業界の“癒着の構造”も、田中角栄さんの政治が生み出したと言われています。
良くも悪くも、いまの日本の政治スタイルと歴史を作ってきた田中角栄さんですが、それまでエリートばかりだった政治の世界において小学校卒で総理大臣になるなど、庶民的な人柄で人気を集めていました。その角栄さんが愛情たっぷりに育てた田中真紀子さん、お父さん譲りの豪快なしゃべり方(声が似てます!)と、歯に衣着せぬ発言で、国民の人気をつかんでいます。ただ、言いたいことを言うために敵も多く、グループ作りが大きなポイントとなる自民党の中では重要なポジションにありませんでした。ご本人は主婦で庶民感覚があることを売りにしていますが、目白のお屋敷で育っているので、どこまでのものか? という疑問をあげる人もいます。外務大臣になって早速、外務省の人事について、慣例に反して自分の意志を通しましたが、外交の舞台でどんな手腕を発揮するのかは、実績がないだけに、これからを見てみないと、わかりません。