

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2003-07-07 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
札幌に来ています。アピュイという犯罪被害者遺族らでつくるNPOの集会が札幌で開かれ、ぼくはシンポジウムの司会者を任されたのでした。この種の集会は道内では初めてなのですが、二百人ちかい参加者を得て、成功といえると思います。

『少年の罪と罰論』
公衆の面前で発言したのは道内の犯罪被害者遺族含めて、計六名(六事件)いらっしゃったのですが、そのうちの四人もの方が、少年によってわが子の命を奪われた母親でした。ときに嗚咽をもらしながら、ときに奥歯を噛みしめながら、母親たちはある日とつぜんに襲いかかった、取り返しのつかない犯罪を語りました。被害者遺族の訴えはいつも、怒りとか悲しみという言葉をつかうことが陳腐なように感じられるほど、鬼気せまるものです。理不尽に愛する者を奪われた遺族の言葉は聴く者の胸を貫きます。ぼくは少年犯罪被害者遺族についての本を何冊も書いているので、たくさんの声を聴いてきているのですが、聴くたびに、加害者や被害者を大切にしない法システムに対しての怒りで身体が震えます。
アピュイでは学校や少年院など、十代の子どもたちに対して被害者遺族としての体験を語る活動もしています。人の命を奪うほどの犯罪を犯せば、殺された側はどのような状況に追い込まれ、いかなる人生を歩むことになるのか。人生を犯罪によって奪われるということはいったいどういうことなのか、を当事者の言葉で若い世代に語るのです。学校はおろか、少年院に被害者遺族がはいって講演することはつい数年前まで前例がなかったことで画期的な試みなのです。被害者遺族の体験を聴くことが犯罪を抑止することにつながることをぼくは願ってやみません。
そして一つ、提案があります。それは、中学生や高校生が犯罪を犯したらどんな法システム下に置かれ、どんなペナルティを受けるのか、などをきちんと学習することです。これが犯罪抑止につながであろうとぼくは思っていますし、少年法を含めた、自分たちと深い関わりのある法を学ぶことは大事なことのはずです。権利を学ぶことにもなる。
ぼくは少年法が改正される二〇〇一年四月直前に評論家の宮崎哲弥さんと『少年の罪と罰論』(春秋社・一八〇〇円)を出しました。少年法のどこに問題点があり、当時、自民党を中心にしたいわゆる「厳罰派」、そして日弁連や研究者、市民運動家などを中心としたいわゆる「人権派」とも実名をすべてあげて批判をしました。そこには、少年法の研究者にはない視点と提案があると自負していますし、少年法の対象年齢の人たちにも読んでほしい内容だと思っています。
万引きをしたら学校を退学になるとか、バイクを盗んだらカンベツにいくとか、もっと悪いことをしたらネンショウにいくとか、人を殺してもあっと言う間に社会復帰できるとか、十代の間を真偽もよくわからないまま情報の断片だけが飛び交っているのが現状だと思います。自分に関係のある法を知ることは、社会が自分たちをどう扱い、どう見ているかということを知ることにつながるのです。