

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-09-02 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
少年によってわが子を殺された親で声をあげているのは大阪の武さん夫妻だけではなかった。長野県の宮田さん夫妻、沖縄の富永夫妻など、十数遺族が社会に向かって発信を続けていたのだった。すべてわが子を複数の少年らによって殺されたが、少年法によって事件の概要は被害者遺族にさえ伏せられてしまっていた。ひどい例だと、加害者の少年らの名前をはじめどこの誰かさえ知らされない遺族もいた。加害少年の審判や処分なども一切が非公開。それは何よりも少年法の精神が「非行少年の保護・更正」を優先させることを決めているからである。警察、検察、家裁、どこにいっても少年法を盾に情報がもらえない。ある日突然に被害者遺族となり、そこに追い打ちをかけるように法の理不尽が立ちはだかる。
私はそれまでいくつかの少年事件を取材してきていたのに、そのすべてが「逆送致」事件(旧少年法では家裁は凶悪事件を犯した十六歳以上の少年であれば検察へ逆送することできると定めていた。そうなればもし少年であっても大人と同様の公開裁判を受けることになる。新少年法ではそれが十四歳に引き下げられた)だったため、大半の少年事件——被害者が死亡している事例であっても——が家裁で秘密裏のうちに処理されていることに思いが至らなかったのである。だいたい被害者死亡事件の十五パーセント程度しか逆送はされていなかったのにもかかわらず、である。
私は武さんらをたずね続けた。そして単に取材をするだけでなく、これまでに自分自身が少年事件を取材しながら、武さんのような状況に置かれている遺族について関心を払うことができなかったことを率直にわびた。慙愧の念に耐えることができなかった。ジャーナリストとして失格だったのではないか、と正直に告げた。(この項続く)