

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-08-19 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
私が少年事件の被害者の問題に目を見開かされたのは、大阪の武るり子さんの存在だった。武さんは息子さんを見も知らぬ高校生に殺されたのだった。文化祭でその高校生らに一方的に因縁をつけられ、リンチを受けた。無抵抗の息子さんは病院に搬送された後に死亡したのだった。九六年一一月のことだ。るり子さんと夫の孝和さんは息子が殺されたという絶望と哀しみに加え、さらに法の二次被害ともいうべき追い打ちをかけられる。それは少年法だった。少年法が加害者の少年を保護し、かれらのいっさいの情報を遮断したのだ。武さんの息子さんがどういう状況で殺されたのか、加害者の少年はいったいどんな少年なのか。どんな取り調べを受け、どんな処分になったのか。加害者についての情報は被害者側にまったく伝えられない。武さんたちは自力で調べるしかなかった。
その上、加害者少年らは家裁で審判をうけたため、非公開の審判内容はとうぜん、武さんに知らされることがなく、闇から闇に葬られることになる。こんな理不尽なことがあってもいいのだろうか。少年法は被害者を踏みにじって成立している。武さんはそんな怒りをどこへぶつけていいものやらわからなかったが、あるテレビ局へ電話をかけた。「私は息子を少年に殺されました。でも、何も知らされません」。その訴えはそこからメディアにのり、社会をかけめぐることになる。私が武さんの叫びをキャッチしたのは、九七年にはいってからのことである。(この項目続く)