

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-08-12 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
当時二二歳だった私は、事件が起きた現場をやみくもに歩き回り、加害者側の人間関係をたどっていった。かれらとヤクザの喧嘩にまきこまれたりしながらも、ひたすらかれらの中から事件への「なぜ」を引き出そうと私は懸命だった。並行して、刑事公判に通い、生の加害者少年の言葉を聞いた。『潮』誌に私はえられた取材成果を随時報告し、一審判決後に私はそれらを『少年の街』という一冊にまとめた。その一〇年後に上梓することになる『17歳の殺人者』の底本はその本である。『少年の街』を再構成し、ほかのルポとともに編み、一冊としたのだ。
しかし、一〇年後に再び世にでたその本の視点は、かつてとはおおきく違っていた。こう書くとまるで他人事のようだが、それほど私の視点は変わっていたのだ。それは『17歳の殺人者』におさめた、三本の少年事件を被害者遺族の立場で描いたことだった。むろん再構成した『少年の街』の文章もタッチが変わり、多分に被害者を意識したものになった。それまでの私に欠落していたもの。それは、まさに「殺された側」の視点だった。
そのことに私が、慙愧の念を感じるほどに自覚するようになったきっかけは、『17歳の殺人者』におさめさせていただいた、武さん夫妻の闘いを知ったことだった。(この項続く)