

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-08-05 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
それは被害者に取材するというより、あきらかな報道被害だった。被害者の両親がいる家に報道陣がおしかけて、インターホンごしや電話で「今日の公判で加害者の少年はこんなことを言っていましたが、どう思いますか」などとしつこく問い詰める。そのときの被害者遺族の追い詰められた心境を私は『17歳の殺人者』(朝日文庫)に書いたが、父親は娘が殺害されていく様を妻(母親)には聞かせまい、伝えまいと懸命だったのだ。それなのに報道陣は容赦なくやってくる。それは被害者の立場を慮るという態度からはほど遠く、報道による二次被害というべきものだった。それが、当時のマスコミによる被害者への取材だったのだ。ほんとうなら、その報道被害こそを報道するべきだった。
また、ひどかったのは、被害者の女子高校生の水着写真まで掲載する雑誌があらわれ、被害者のプライバシーをセンセーショナルに書きたてた。こういったマスコミの「被害者取材」の暴走によってしか、事件報道のなかに被害者が登場することがなかった。私はそこに加わってはいなかったとはいえ、被害者遺族が受けていた報道被害に留意できなかったことにいまでも恥じている。(この項続く)