

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-07-29 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
私が初めて手がけた事件もののノンフィクションは、一九八九年に東京・足立区綾瀬で起きた女子高校生コンクリート詰め殺人事件だった。当時、私は二二歳で、駆け出しもいいところのライターだった。事件は大きくメディアで取り上げられたが、その残虐性が強調されていた。少年法を意識的に破り、少年の実名を報道する週刊誌もあらわれた。
私は事件の起きた街を歩き始めたのだが、私の関心の中心は加害者がなぜあそこまでの行為を犯してしまったのかということだった。東京地裁では少年たちに対する刑事裁判が進行しつつあった。私はそれまでに読んだ先達の事件ものの作品のセオリーにしたがって加害少年の友人らをさがし、加害少年らが通った学校を取材した。少年らの親にも話をききたかった。
裁判を傍聴するためには通常は早いもの勝ちなのだが、著名事件は希望者が多いため、抽選となる。私はくじ運がわるいせいもあるが、皆勤賞にちかいほど裁判所に足を運んだが当たったのは二〜三回だった。傍聴できない時の少年の供述(公判記録)は加害少年の弁護士に頼み込んで謄写させてもらうしかない。仮に傍聴できても、正確にメモできないのでどうしても公判記録は必要になる。
当時、被害者側にアプローチしたメディアはあったが、それは「今日、公判でこんなことを加害少年が言ってましたがどう思われますか」というようなものだった。(この項続く)