

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-07-22 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
そういう構図のなかで「被害者」というときは、本来の意味での被害者ではなく、社会や国家の犠牲者としての「加害者」のほうをさすようなところがあった。加害者がなぜ生み出されてしまったのか、ある人間が犯罪を犯すまでどうして周囲(社会)が救いの手をさしのべることができなかったのか、そういうモチーフで描かれるパターンが多かった。
前にも書いたがそれはそれで一つのスタイルである。しかし、そこで見落とされてしまうのは、まさに被害者の存在だった。殺された側、ケガを追わされた側、人生を加害者によって奪われた側、そういうほんとうの意味での弱者が描かれることは皆無に等しかったと思う。それはさきに述べた理由に加え、被害者の側には被害者になりえる背景や理由がなかったこともあるだろう。つまり、被害者は通り魔的に襲われたのであり、不幸極まりない偶然だからということだ。私が前にあげた先輩ライターの一人も、加害者は必然だが、被害者は偶然なので取材しない、という意味のことを名言している。ようするに、被害者側に取材をしても、犯罪の背景や深層がみえてこない、ということだ。(この項続く)