

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-07-08 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
『少年に奪われた人生』という本が八月に朝日新聞社から出る。サブタイトルは「犯罪被害者遺族の闘い」。家族を少年によって殺された遺族たちの、その後の闘いを記録したノンフィクションだ。表紙はずっと前から好きだった絵本作家の長谷川集平さんに描いてもらった。実物を手にとって見てほしい。長谷川さんの絵はせつないけど、力強さがにじみでていて、遺族の胸の内を表現していると思う。じっと見ていると、この数年間に私が聞き取ってきた遺族の声がオーバーラップしてくる。
私が犯罪被害者遺族の方々とおつきあいをさせてもらうようになったのは、大阪の武るり子さんが「少年犯罪被害当事者」の会を97年に結成してからである。家族を少年によって殺されるという悲劇を味わっただけでなく、少年法やマスコミから二次被害、三次被害を受けた人々が集まった。少年法に象徴されている日本の刑事司法のなかには、犯罪被害者の権利は何も明記されていない。とくに少年法は、加害少年の保護する目的のために被害者遺族にいっさいの情報を提供しない。加害少年への罰も相対的に甘い。
私はそれまで若輩者なりに、女子高校生コンクリート詰め殺人事件など、いくつかの少年凶悪事件を取材して作品を書いてきたが、そこには被害者の姿が欠落していたのだった。その重大性にようやく気がついたのだ。それは加害者に与するという意味ではなく、事件に被害者とその遺族がいるという当たり前の事実と向き合ってこなかったのだった。それには、私なりに考えるいくつかの理由がある。(この項続く)