

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-07-01 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
自分が好きな相手、いつか仕事をさせてほしい相手、会いたい相手の「世界」を知るのは至福であるし、相手にとってみてもうれしいことだと思う。7月に実業之日本社からでる『開国マーチ』を担当した大森隆は、荒木さんの実家の下駄屋についての情報まで知り尽くしていて、荒木さんが「どうしてそんなことまで知ってるんだ?」と驚くほどだった。荒木さんはいたく喜んでいて、大森の編集者としての才覚に敬意を払ったものだ。『開国マーチ』は、荒木さんのことが大好きで、なんとしても荒木さんと仕事がしたいと願った大森と私が考えた企画だが、その土台になったのは大森と私が持っている荒木さんの膨大なデータベースなのだ。
たまに、私のような物書きのところにも、「ライターになりたいのですが相談にのってほしい」という若い人がやってくる。こちらは気恥ずかしいのだが、私に憧れているとみなさん、おっしゃる。しかし、ほとんどの方が、私の仕事を読まれていない。近刊を1〜2冊読んだだけ、という方がほとんどなのだ。つまり私のことをほとんど知らないのに、頼みごとにやってくる。これでは乗り気がしない。逆に私のことを十数年前までの著作まで読んでやってくる人もいる。そういう人とは安心して話すことができるし、先々も付き合っていきたなあと思う。
会いたい人と濃密な関係をつくるためには、単純な熱意や勢いだけではだめだ。熱意に裏打ちされた相手に対する知識と、相手に関わるための周到な準備が必要なのだ。じつはこんなことは当たり前のことなのだが、いがいに勘違いしている若い人が多いように思うのだ。