

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-06-10 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
けっきょく、荒木さんとの初仕事は幻に終わった。掲載される予定の雑誌はゼロ号こそ出ていたものの、創刊号が出ないことになってしまったのだ。つまり、見本誌だけができた段階で廃刊、というか頓挫。事情はよくわからない。荒木さんと私の共同作業はお蔵入りしてしまった。あのネガはいまどこにあるのだろうか。
以来、私は荒木さんから個展などの案内はいただくようになったが、お会いすることはなかった。再会させていただくのはそれから数年経った、一昨年のことである。実業之日本社が出していた(過去形なのはつい最近、休刊してしまったから)『JN』という経済誌での仕事を組ませていただいたのだ。日本で暮らす外国人の現状を追った「開国マーチ」という連載で、やはり荒木さんが撮り、私がルポを書いた。連載は同名のタイトルでこの7月に単行本になって世に出回る。ぜひ読んでほしい。
幻に終わってしまったとはいえ、20代だった私が天下のアラーキーと仕事をさせていただくという体験を通して、マンモの読者の若い世代に伝えたいことがある。それは、信じれば夢は叶う、とか、願い続ければ好きな人に思いは伝わる、いった、ガンバリズムというか、ポジティブ・シンキングとでも呼ぶべき言い方はじつはかなり勘違いなのではないかということだ。一部の出版社がそんなメッセージを詰めこんだ本を次々につくって十代や二十代に向けて売り出しているけれど、やみくもに「前向き」になっても自己実現は困難なだけで、どこまで自己実現に近づけたかさえも計れないまま挫折してしまう可能性が高いと思うのだ。(この項目続く)