

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-04-01 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
憧れの人に会えたとき、ましてや仕事がいっしょにできたときは、いつも緊張と恍惚感がないまぜになった気分になる。これから、そんな体験のいくつかを振り返っていこうと思う。私のそんな体験が、読者の十代のヒントになってくれたらいいなと思う。
私は中学時代から、『写真時代』という雑誌に掲載されていたアラーキーこと荒木経惟さんの写真に強く惹かれていた。その雑誌に掲載されていた氏の写真は、いうまでもなく女性のヌードで、過激きわまりなかった。その雑誌は荒木さんの写真を載せることも含め、ヌード表現のタブーに挑戦していることで有名だった。と、いうより、『週刊プレイボーイ』や『平凡パンチ』(すでに廃刊)などとはあきらかに一線を画してしていることは中学生の私にもわかったし、かといってビニ本自販機(ビニ本って知ってるのかな、いまの男の子たちは?)で売られているようなエログロ系ともちがった。
と、いっても当時は、私たちはパンチを学校に持っていっては騒いでいたぐらいだから、荒木さんのそれは学校に持っていって見るものじゃなく、かといって買って一人で見ることもできず、なるべく人気のない、オヤジが一人で勘定場に坐っているような本屋で立ち読み(見)を繰り返していた。それも一回の立ち読みはせいぜい十数秒で、パラパラっとページをめくって、網膜に刻み込む。もちろん、恥ずかしいからである。が、その十数秒の集中力はものすごいものがあり、荒木さんの撮る女性たちのあられもない肢体が放つ匂い立つようなエロスが、脳裏で何倍にも膨らんでいくのだった。至福といってもよかった。(この項続く)