

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-03-18 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
データマンがアンカーに材料となる原稿を渡したあと、活字となる完成原稿を印刷前に見ることはめったにない。私の場合は、アンカーが尊敬していた先輩ライターだったので、その出来上がりを楽しみにしていた。私の集めてきたデータをどう料理して作品化してくれるのか楽しみだった。私が新宿二丁目などで若い、それもゲイの権利について発言している彼らについても、先輩ライターNさんがどう書くか、私は楽しみにしていた。が、結果は裏切られた。印刷されたそのページを見て、私は愕然とした。そこには、Nさんのゲイに対する嘲笑的な「見方」が散りばめられていたのだ。ゲイたちがオネエ言葉を使うシーン、セックスについて語るシーンなどはとくに、Nさんの意図が感じられた。Nさんはどこかできっと、ゲイセクシャルの男性たちをバカにしていたのだ。それがありありと感じ取れる文章だった。私が目からウロコが落ちる思いで取材してきた材料の実の部分だけは正確に使ってあったが、私が彼らに対して感じたものは反映されておらず、当然といえば当然なのだがNさんの感性で貫かれていた。
すぐに、抗議がきた。取材した若いゲイたち、そして彼らを紹介してくれたゲイ雑誌を刊行している知人からだ。彼らは怒っていた。というより、私に裏切られたという気持ちを訴えてきた。当然だ。彼らは、ゲイに対する偏向的で見せ物小屋的な報道は絶対にないように、という約束をして私の取材に応じてくれたのに、私はそれを破ってしまったのだ。私はどうしていいか、わからなかった。うろたえ、狼狽し、自分を責めた。(この項続く)