

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2002-03-11 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
私はゲイセクシャルであることを公言し、ゲイをとりまく差別や偏見を告発するミニコミを出している友人と会い、当事者としての思いを聞いた。彼から話を聞くうちに、私自身が属しているヘテロ(異性愛)社会や文化がいかにゲイにとって抑圧的か、私自身も知らず知らずのうちに彼らの存在を否定してきたことに気がついた。ヘテロセクシャルの「常識」では、「どうして男を好きになったの?」という問いかけをしてしまうが、ゲイセクシャルの「常識」は「じゃあ、そういう質問をするあなたはどうして女を好きになったの?」と聞き返す。その両方の問いがまったく等価であることに私は意識を持たなかった。
その知人が主宰するミニコミは、現状を告発する以上にゲイ同士の意見交換や情報交換の場として機能していた。私はそこに集う何人かの若者を紹介してもらい、インタヴューをおこなった。若い彼らが集まるゲイバーにも連れていってもらった。私は生れ育ちがゲイタウンの片隅であったこともあり(が、入ったことはなかった)、比較的すんなりその雰囲気に溶け込めた。ヘテロ同士に好き嫌いのタイプがあるように、もちろんゲイ同士にもあるし、ヘテロしか好きになれないゲイもいる。ひとり一人がちがうセクシュアリティを持っているという当たり前のことを私は実感していった。
そんな取材をしばらく続けたあと、私は原稿を書いた。原稿といっても、Nさんというアンカーがいるのでデータ原稿である。私は自分が発見したこと、認識させられたこと、知らなかったことを率直に書き、インタヴューさせてもらった若者たちの言葉もそのまま起こした。そしてそれをNさんに渡し、あとはそれが活字になるのを待つだけだった。通常、データマンがアンカーの書いた原稿をチェックすることはめったにない。それをあとで悔やむことになる、事件が私を待ちうけていた。(この項つづく)