

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2001-12-10 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
一方的に事務所をたたみ、活動停止を宣告してしまった私に対する仲間らの視線は突き刺さるようなものだった。裏切り者、卑怯者と私は蔑まれ、人間関係は崩壊した。私は名古屋を逃げ出すように飛び出し、東京で一人暮らしをはじめたのだった。名古屋のほうを向くのも嫌になるぐらい、私はダメージを負ったのだった。
私はそれから何年間もめったに実家には帰らなかったのだが、あるとき、当時の仲間の一人がネパールを旅しているときに亡くなったため、葬儀があることを聞いた。私はそこでかつての仲間に会うことをためらったが、葬儀には行かねばと思った。やはり、数人のかつてのメンバーと顔を合わせた。かれらは私の顔をみるなり、「まだ、生きてたの?」と嫌味たっぷりに言葉をはきつけた。私は何も言わず、そこを立ち去るしかなかった。
私の東京での身分は大学生だったが、大学生活がそれまでの濃密な生活を埋めるようなものになるはずがないと思った。入学式をふくめて数日は通ったが、カラッポになってしまった己の精神を回復させるようなものは得られそうになかった。友達をつくるのもめんどくさかった。
だが、アルバイトはしなくてはならない。私は本を出したことがきっかけで知り合った週刊誌などの編集者をたずね、週刊誌や隔週刊誌の記者をはじめた。記者といっても、署名記事を書かせてもらえるようなものではなく、データマンという仕事だった。テーマをもらい、数日間で取材をしてデータを集め、締め切り日にデスクやアンカーに手渡すという仕事である。名古屋ではちょっとした「有名人」だった私は、だれも私のことなど知らない週刊誌の仕事にまみれていった。情報の汚濁にまみれ、馬車馬のように働かされるその仕事は、名古屋での体験を忘れるのにちょうどよかった。私は大学にいくこともやめてしまった。