

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2001-11-26 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
私と母親との関係は良好なものとはいえなかった。高校を卒業すると同時に本を出し、地元でいきなり時の人となってしまった息子に戸惑うと同時に、どこかで軌道修正をして、普通の十代に戻ってほしいと思っていたようだった。とにかく大学にはいりなさい、と口をすっぱくして毎日のように私に説教を垂れつづけた。私はごまかし続けていた。本の反響を受け、「反管理教育」の社会運動を組み立てていくだけで、すさまじいスピードで時間が過ぎていったから、受験勉強する時間などあるわけがない。母親はときに堪忍袋の尾が切れたかのように私を責め、泣きながら、受験勉強することを迫った。私もときに感情的になり、「やればいいんだろ! やれば!」と怒声を浴びせることもあった。
事務所を借りたはいいものの、そこを拠点にした運動はうまくいかず、仲間からパージまでされてしまう始末。家では、母親の説教が待っている。私のストレスは日に日に高まり、それをどこに向けてよいのやらわからなくなっていた。たしかに、たまたま一冊、本を出したぐらいで、将来が保証されたわけではない。いま一時だけ、マスコミがちやほやしてくれるだけだということもわかっていた。これから、俺はどうするのだ、どうやって生きていくのだという自問自答を繰り返し、悶々とした日々を過ごした。やがて、私は一つの結論に達した。すべて壊してしまおう。やめてしまおう。そして、この町を離れよう。