

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2001-09-24 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
高校総体に皇太子が参加することに反対する、というメッセージを出してから、高校生の私には私服警察官の尾行がつくことになった。私はだいたい3〜4人で行動していたが、全員にそれはついた。私たちはそのメッセージをビラに書いて駅などで配布したりするだけの行動で、実力阻止だのというつもりはさらさらなかった。でも、警察は「反天皇」と名乗る行動はすべてチェックするのだろう、私たちにも細心の注意を払った。学校帰りには後をついてきたし、家の電話に妙な雑音が混じるようになったのもこの頃だ。電話で話すのをなるべくやめて喫茶店で話していると、見慣れた警察官らが7〜8人も横のテーブルにいたこともあった。私たちは彼らから見たら一端の過激派だったのか。十数年後、ある警察関係者に聞いたところによると、私たちは「過激派高校生」と認識されていたようである。思わず笑ってしまった。
総体当日、私はスタンドにいた。何もするつもりはなかったが皇太子に最敬礼をさせられる選手たちの様子をこの目で見ておこうと思ったのだ。スタンドはごった返していたせいか、いつもの尾行者が見えない。と、私がグラウンドをよく見ようと思って身を乗り出すと、あたりから10人近い屈強な男らがいっせいに動き、私にいつでも飛びかかれる態勢をとったのだった。私は思わず身震いした。国家の権力というものの姿を身体で感じた一瞬だった。