

1965年愛知県生れ。ノンフィクション作家。主な著書に『17歳の殺人者』(ワニブックス)『学校的日常を生き抜け』 (教育資料出版会)『美しき少年の理由なき自殺』(メディアファクトリー)など。
2001-05-07 号
藤井 誠二(ノンフィクション作家)
私が通っていた小学校には、市内最大の被差別部落からたくさんの子どもたちが通ってきていた。小学2年生の私には被差別部落の存在とは何なのかわからなかったが、ある担任の言動で「学ぶ」ことになるのだった。
ある時期、スーパーカーブームがあった。町中の外車を写真に撮ったり、カードを集めた。スーパーカー消しゴムと私たちは呼んでいた、クルマのかたちをした、消しゴムがあった。私たちはこづかいを貯めて競ってそれをコレクションした。その消しゴムを売っている駄菓子屋は近隣に一軒しかなく、その店に私たちは足しげく通った。が、ある日、担任がこう言ったのだ。「お店のある町には、行ってはいけません」
はっきりとした理由は言わなかったと思うが、担任がその町を忌み嫌っていることははっきりと伝わってきた。なんでだろう。あの町には友だちが大勢いる。
私はその時いぶかしく思ったが、母親などに疑問をぶつけてみると、担任の「意思」はすぐに理解できた。あの町は昔から「部落」と呼ばれ、住む人々は差別をされている。担任もまさにあの町を差別したのだった。
私は幼かったが、その時にはっきりと、担任を軽蔑した。先生という立場の人間がそのような偏見を持ち、それを子どもたちに伝えるとは、なんという歪んだ人間なのだろうと思った。そのような人間と相対すると、全身が熱くなって、なぜだか涙がこみあげてくる私の身体は、当時も今もまったく変わらない。
私が善人面をした人間を徹底的に疑う習性がついたのは、まぎれもなくこの頃である。まさに反面教師だった。