

1967年茨城県生まれ。医学ライター。医療関連編集者を経て、フリーランスライターとして独立。循環器、癌全般、消化器、泌尿器、皮膚科、眼科などの医学記事を執筆。海外取材も多い。
2004-05-03 号
高野 雅典(医学ライター)
中国には、食事で健康を守り病気を防ぐ「薬食同源」という考え方があるそうだ。特殊な食品でなくても、体に良いとされる食品は色々あり、テレビの健康バラエティー番組で「この野菜は○○に効果がある」「○○を防ぐには○○を食べると良い」といった情報が毎日のように放送されている。僕もそれらの番組を見ては、「なるほど、なるほど」と、そのつど納得した気持ちになる。けれども、しばらくすると、紹介されていた内容は結局なんとなく忘れてしまう。これでは、せっかくの情報がもったいないと思って、そのつど書き留めておいたこともあるのだが、食品リストが増えてゆくにつれ、今度は、だんだん「どんな食品でも、何かの役にはたっているじゃないか(笑)」という気持ちになってくる。
「これこそ本当に体に良い食品だ」といえる食品なんて本当にあるのだろうか・・・。
僕自身は、結局のところ、色々な食品をバランス良く、好き嫌い無く食べるのが一番なのだろう、と考えるようになった。例えば、世界癌研究機関(WCRF)と米国癌研究協会(AICR)が共同で1997年に発表した「癌予防14カ条」という文書をみると、穀物、豆類、根菜、果物などを含む植物性の食品を中心にして多種類を食べること、肉類は豚肉や牛肉は取りすぎないようにして、むしろ魚や鳥の方が好ましいことなどが書かれている。また、塩分の取りすぎも控える、肥満にならないように気を付けて、適度な運動をするようにと書かれている。
米国癌研究協会(AICR)公認の日本語ページ
http://www.02.246.ne.jp/~sophia/index.html
(左側のメニューから「ガンにならない為の14ヶ条」をクリック)
そして、興味深いことに「癌予防14カ条」には、そこに述べられた正しい食生活を心がけていれば、おそらく栄養補助食品(サプリメント)は必要なく、癌の危険性を減らす役には立たないだろうと、書かれている。
サプリメント・・・これは、最近、僕がとくに気にしている言葉だ。
というのも、サプリメントは、まさに食品と薬の中間的存在に思えて、「どこまでが食べ物で、どこからが薬なのか?」という疑問を生じさせた張本人だからである。一般に売られているサプリメントは、法的には「食品」の範疇にある。けれども、そのパッケージや宣伝文句を見て、皆さんはどう感じるだろうか。「これは薬だ」と完全に思いこむ人はいないだろうが、しかし、「なんとなく薬っぽい」と感じている人は多いだろう。少なくとも、サプリメントは「おいしいから買う」ものではなく、「何か効果がありそうだから買う」ものだ。つまり、一般消費者にとってのサプリメントは、限りなく薬に近い食品である。
サプリメントを攻撃するつもりはない。先ほどの「癌予防14カ条」だって、そこに書かれている正しい食生活をしていれば、サプリメントは不要だと述べているに過ぎない。栄養不足や偏食をしていたら、癌は予防できないだろうから、そういう場合にはサプリメントも有効なのかも知れない。
しかし、この「有効かも知れない」という部分を科学的に確認することは実は非常に難しいことだ。とくに、食品が病気の予防に役立つかどうかを調べるのは容易なことではないと思われる。
例えば、あるサプリメントが癌予防に役立つと仮定してみる。これを確かめるためには、そのサプリメントが有効そうな人(つまりサプリメントを飲まないと、その栄養がとれない人)を何人も探しだし、この人たちを2つのグループに分けて、サプリメントを飲むグループと、飲まないグループにする。そして、それぞれのグループの一部の人が実際に癌にかかるまで何年も何十年も調査を継続しなければならない。もちろん、その間、サプリメントを飲むグループは、毎日決められた量のサプリメントを飲み続ける必要がある。例え1種類の栄養分が不足していたとしても通常の人が癌にかかる確率というのは、そんなに高くないだろう。ということは、この2つのグループの人数は相当多くなければ、実際に癌にかかる人というのは現れてこない。
科学的にハッキリとした結果を出すためには、おそらく、2つのグループの人数は数千人でも足りないのではないだろうか。
強力な効果がある「薬品」でさえ、数百人から数千人を集めた数年間の臨床試験で、やっとその効果が証明される。おそらくサプリメントの効果を証明するには、薬よりも、もっともっと大勢の被験者と長い期間が必要になるだろう。だから現状では、サプリメントは、「効くかもね」という期待を抱いて使ってみるしかない・・・。そのような物と言えそうだ。
ところで、来週は、厚生労働省がお墨付きを与えた「トクホ」と呼ばれる保険機能食品について考えてみよう。これも「食品」であることに変わりはないが、何やら「効果」を持った食品ということのようだ。その効果とは一体どの程度なのだろうか?